以前友人2人(それぞれA、Bとする)と旅行に行った際、私は内心「アテンドしなければ」と思っていた。なんなら先輩風を吹かせようとしていたのかもしれない。なぜなら、その街には5年以上住んでいたことがあり、全日程の行動範囲も初めてのところではなかったから。しかし、その思いは見事に打ち砕かれることになる……。
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とあるイベントに参戦し、ホテルへ向かうときのこと。その日は夕方になっても日が高く、そしてギラギラと輝いていた。風はほとんどなく、むさ苦しい空気が停滞している。
行きは確実性を重視してタクシーに乗ったが、帰りは節約のために公共交通機関と自らの足を使うことにしていたため、Aと私はキャリーケースを引きずりながらエッサホイサと歩みを進めていたBは途中から別行動で先にホテルに着いていた)。
逆のホームに来てしまって無駄に階段を上り下りするというミスをやらかしながらも(あれ、元住民?)、無事にホテル近くの駅に到着。Bから「◯番出口から出ればすぐだよ」とLINEが入っていたので、その通りにする。さあ、外に出たぞ……。で、どっち?
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宿泊したホテルはいわゆる繁華街にあり、右を向いても左を向いてもビルが立ち並んでいる。そして大体が飲食店・コンビニ・ホテル。ランドマークになりそうなものが全然見当たらないぞ。しかし元住民の私は知っている。この地域は住所のシステムがわかりやすく、信号の住所標識を見比べれば方角もわかり、辿っていくことで地図を見ずとも目的地にたどり着けるのだ。
ということで早速信号機を見る……。あれ、住所ついてないんですけど。
詰んだ。
Bからは重ねて「セブンイレブンを右だよ」と言われていたものの、少し歩くと複数店舗出てくる。困った我々は先人の教えを一旦無視し、グーグルマップを開いてみた。身近な人間ではなく、機械に教えを乞うたのである。しかし文明の利器はなぜか現在地がズレにズレていて、どこにいるのかさえわからないのだった。
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イチかバチかで進み、行きつ戻りつしながらやっと見つけた交差点の住所を前に2人で考察する。
三谷「こっちが◯番だから、西ってこと?」
A「(地図を見ながら)えーっと、ん、待って……」
三谷「数字が減ってるから……いや、逆?」
2人とも、全然頭回ってないよ!
ほぼ1日中稼働していて、飲み物も飲みきっちゃって、駅に到着するまでもそこそこ歩いていたのだから無理もない。ただ、駅に向かうまでの道中とは違い、このへんはよく来ていたのでサクサク案内できるだろうという自信があった。◯番出口から出たことがない、という言い訳はできなくもないが、途中で確実に知っているデパートを発見していたのに結局方角が定まらなかったのはアウトだろう。
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最終的にどうやってホテルに着いたのかは覚えていないが、Bの教えに従っていればよかったという結論に至ったということ、そして自身の無能さに恥じ入ったことは記憶にありありと残っている。
そもそも地図読むの下手なんだし、慣れている道だって感覚で覚えてるんだから、イキっちゃだめ! あとホテル名と場所は事前にちゃんと把握しておいて!(Bに任せっぱなしだった)
ちなみにその翌日の目的地は、私が何年にもわたって通っていたところばかり。名誉挽回とばかりに「ここから出れば近いから……」と先陣をきって歩いていたのは言うまでもない。