「打ち上げ花火のように私の恋は散っていった。」
「午前零時ちょうど、私たちは笑いながらそれぞれの道へ進んでいった。」
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恋の終わり方次第では女性を輝かせたり、破壊へ向けたりする。
「神様は女性に一番美しくも残酷な行為を与えたなー」と思ってしまった。
できれば恋は長く、そして楽しく続いてほしいが上記のフレーズのような恋の終わり方もしてみたかった。想像の範囲だが恋の終わり方が美しければ美しいほど、思い出としても鮮やかに残るし何より自分のためになると思ったからだ。
辛いエピソードは誰だって思い出したくはないだろう。
これまでの自分の恋の終わり方は、一言で表すと「胸糞悪い」が適切だと思っている。
告白して振られてはい!そこで終わり!、であればまだ断然まし。
私の場合、人は違ってもその後に色々あり最終的には相手も自分、そして第三者にも不快な思いをさせて関係が強制終了した。しかし主張したいのは、決して相手が不幸になるように意図的にやったわけではない。無意識に「自分の穴を埋めたい」ために、不快な恋の終わらせ方をしてしまったのだ。
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一例を挙げると、少し前に私は同じ部署の先輩に片思いをした。年上で、容姿は文句なし。情けない姿もあったが、基本的にはとても優しく当時部署異動してズタボロだった私の心の支えとなった。最初は先輩・後輩関係だったが、次第に自分の片思いが強くなり先輩と恋仲になりたい、とボーダーラインを越えようと試行錯誤していた。実際関係性は良かった。
時に社内から「付き合っているの?」と訊かれたこともあった。
しかしちょうどクリスマス前、街中がイルミネーションで煌びやかになり始めていた頃だっただろうか。
自分の心の中では、「今年こそせめて居酒屋飲みでもいいから、先輩をクリスマスの日に誘おう!」と決めていた。当時先輩と私は帰る方向が同じだったためいつも途中まで帰っていた。
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「今日がチャンス!」
気合入れて話しかけようとしたその時、察したのだろうか。先輩は私を疎ましそうに、何も言わずさっと一人帰っていった。
「え?」
動揺とその人に冷たくあしらわれたように思えて強いショックを受けた。当時の自分は恋愛経験の少なさや見捨てられたくない衝動、寂しさで心に穴があいていた。
わざとか、それとも別の理由か分からなかったが、その行動で私の心の穴が大きくなってしまった。
「私の恋は終わった。」
「嘘つき。」
「私を見捨てたこと、後悔させてやる。」
私は複雑な感情のあまり自分の穴を埋めるために、その日の夜マッチングアプリに登録した。その人よりも年収が高く、少し年上、同じ趣味でとりあえずかっこいい人達に自ら接近した。「見返してやる」、そこに純粋に次の恋に切り替えようという前向きな感情は全くなかった。
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結果はご想像通り、うまくはいかなかった。
アプリ内ではうまくいっていても、私自身に「恋」という気持ちが全くなかったために告白されても「無理」と心を踏みつけるなど、自分の恋の終わらせ方が別の相手の恋を終わらせてしまった。
もちろん、自分の心の穴が埋まることもなかった。自分の都合で相手にも失礼なことをしたと今も罪悪感を持っている。このようなことを結婚するまでに3回やってしまった。
そして今、自分の心に穴を感じることはほぼ無くなった。
しかし街中を歩いていて片思いした人の身に着けていた物や香り、似たような人に出会う度、罪を感じる。「精神的にまいっていたから」「過去の事だから」と、これ以上罪を意識しなくてもよいのではと思う時もあるが、自分の穴は埋まっても片思いした人や第三者の心にダメージを与えたのは事実だ。
二度と人を傷つけるような恋の終わらせ方はしないと決意したと同時に、もしどこかで会うことができたら、ちゃんと謝りたいと思っている。