私はアイドル好きの姉の影響で幼少期からモーニング娘。やAKB48などの女性アイドルが大好きだった。中学生に上がりクラスのみんなが人気の若手俳優や男性アイドルの話をしている中、私はさっぱり分からずにいた。

◎          ◎

そのまま大人になり社会人になった時、以前から好きだった超歌手の方がアイドルグループを作ることになった。そのグループのメンバーの「兎凪さやか」に私は恋をした。彼女は自身の容姿にあまり自信がないようだが、それを写真の加工や自撮りでカバーし、自分のなりたい自分になることを特技としている強い女の子だった。そんなありのままの自分を受け入れ、加工で変身し武装して突き進んでいく等身大の姿を私たち一般の女の子たちに見せてくれたさやかちゃんのおかげで、私は色々なことに挑戦できるようになった。さやかちゃんは私の人生を変えてくれたかけがえのない一人だ。

さやかちゃんがアイドルになってから私は密かに推し始めた。しかし現場には行かず自宅で一人動画を見たりCDを購入するだけの、俗にいう在宅オタクである。次のライブは行こう、今度こそ行こう、と思い続けているうちにさやかちゃんはアイドルを辞めてしまった。その時私は本当に後悔した。好きな人には自分から会いに行かなければ、好きを伝えなければ一生後悔する、そんな当たり前のことを知った。

◎          ◎

それから数年後、さやかちゃんがアパレルブランドを立ち上げることになった。そのブランドの服は『かわいいを諦めない』をコンセプトにしている。そのコンセプトをみた瞬間、私はなんだか分からないけれど涙が止まらなかった。ずっと好きだった人がまた表舞台に戻ってきてくれる、そしてたくさんの女の子を強くすることができる最強のアイテムを持ってきてくれた。今まで着てみたかった憧れのロリータ、リボンのついたピンクのブラウス、ふりふりのスカート。身長も高く、比較的大人っぽい印象を持たれる私はずっと着たくても着れない、そんなお洋服に憧れていた。いつもデニムを履いている私がふりふりのスカートを突然履いたら友人たちはどんな顔をするんだろう、どう見られるんだろう。そう思うと怖くて手が出せなかった。しかしさやかちゃんが作ったお洋服は甘すぎず身長の高い人でも着れるようなデザインにしてくれていて、とても挑戦しやすかった。そして何よりもかわいいを諦めない、この言葉に背中を押されたのだ。

◎          ◎

それから二ヶ月後、そのお洋服は購入したが着ていくところもタイミングもなくハンガーにかけたままインテリアになっていた。そんな時さやかちゃんがまた地下アイドルとしてデビューしてくれた。今度こそ会いに行きたい。会いに行って好きと言いたい。さやかちゃんのおかげで自信を持てたよと、きちんと面と向かって感謝を伝えたいと思った。

さやかちゃんが作った戦闘服を着てどきどきしながら向かった地下アイドルの現場、初めて生で見たさやかちゃん。とても煌めいていて、私はこの人を好きになれてよかったと心の底から思った。この服に出会わなければきっと今までと変わらないいつもの私でいたと思う。だけどこの服に出会えたから憧れのものに挑戦する覚悟ができたし、好きな人に私の言葉で気持ちを伝えることができた。このふりふりで世界一可愛いお洋服は世界最強の戦闘服だ。