私は今まで長らくお風呂について悩んできた。ぜひ皆様にも考えてみていただきたい。
風呂掃除はなぜ楽にならないのか。
今私たちの生活はこの上なく豊かになり、面倒ごとは日に日に減少している。乾燥機付き洗濯機や床のお掃除ロボットには感動したが、近頃はハンドソープの泡が自動で出るようになってこのままでは阿呆になりそうだと心配すらしている。なのに、風呂掃除に関してはなぜ全く進化しないのか。実は進化しているが一般に普及していないのか。摩訶不思議である。

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私が風呂掃除に悩む歴史は、風呂掃除担当を任命されたことに始まり実に10年以上に及ぶ。夏は汗を流す場所を掃除するために汗をかき、冬は冷え切った風呂場に裸足で立っていつまでもお湯にならないシャワーを恨んだ。担当だった10年間、私の風呂掃除は最初から最後まで一切の進化なく擦り洗いだった。

その後一人暮らしになり、私はシャワーで済ませるようになった。よって、風呂桶はたまに洗うだけで良くなった。女子たるもの、毎日湯船で心身を整えてQOLなるものを高く保つべきとは理解している。
風呂掃除さえなければ毎日入りたいのだ。ああ早く、誰かなんとかしてくれ。誰もなんとかしてくれないならいっそ私が解決してやろうか。

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ということで、この難問を解決すべく、私なりにはっと閃いてみたことが3回ほどある。

その1。擦らずに落ちるという謳い文句の風呂掃除用スプレーを購入してみた。隅々まで吹きかけて、しばらく放置して流すだけだという。しかし、CMのように満遍なくスプレーをかけるのが非常に難しい。水鉄砲のように一箇所にぶしゅーっと出てしまって、ああ、ここにこんなに泡がいるのに隣はスカスカだからもう1ぶしゅー……などと繰り返しているうちにとんでもない量の洗剤を消費してしまった。しばらく置いて流したが、結局なんとなく気持ち悪い気がして擦り洗い直した。

その2。お風呂用の高級岩塩を購入した。風呂に何か入れようと思ったそもそもの理由は、湯船に浸かるのが楽しくなれば風呂を洗う気も起こって毎日湯船に浸かるステキ女子ライフも夢じゃないと思ったからなのだが、なんとこの塩、身体を温めるだけでなく、使うことによって浴槽の汚れまで取れるという。即買いした。初回は仕方ないので掃除をし、早速お湯をため、岩塩を放り込み、蓋をする。先に体を洗って蓋を開けると……臭い。温泉のような匂いがしますよとは事前に言われていたが、これは新発見だった。硫黄の匂いというのはあの神秘的な空間と相まって温泉らしさを引き立ててくれるのであって、ただの真っ白な狭い浴槽から硫黄の匂いがしているのでは臭い以外の何でもないのである。翌日、ほんのり硫黄の香りが残る浴槽から清潔感は感じられず、おとなしく擦り洗いするのであった。岩塩は2年経った今でも半分以上残っている。

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その3。風呂を出る時に体を拭いたタオルで風呂場の水滴を拭き取る。これなら毎日風呂掃除をしなくても綺麗に保つことができるし、なんなら風呂に入る前に掃除をするよりもカビ防止に効果的である。だが弱かった。これまでの苦痛を10とすると8くらいにはなったが、私としては3くらいまで減らないと納得がいかない。こんなことが続けられるなら最初から大人しく風呂掃除している。モチベーションは降下の一途を辿って日に日に拭き取る範囲が狭くなり、湯船は早々に諦めた。元々毎日風呂掃除をするマメさのある方にはぜひおすすめしたい方法であるが、こんな私におすすめされても誰もいいねとは思わないであろう。

このようにして結局私はいまだに風呂掃除を楽にする方法を見つけられずにいる。これを読んだ誰かが本気で何かを考えてくれて、もしかして数年後には楽になるかもしれないなとほのかに期待しつつ、私としては無駄あがきをせずに祈りに徹することとする。