お風呂は私にとって面倒な場所、そして泣く場所。

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とても面倒な場所、お風呂。お風呂に入ろうと決心して立ち上がって着替えとタオルを用意して歩いてお風呂場に行って化粧を落としてやっと入る。入るまでの工程が長すぎる。もう一つ主張したいのはドライヤーの面倒くささ。わざわざ髪をシャワーで濡らしてもう一度乾かすという行動が、意味わからないと思ってしまう。だからいつもお風呂に入る気持ちがない。次の日に用事がない日や外に出ていない日はお風呂に入らないで寝てしまう。

そして泣く場所、お風呂。私は感情に敏感で、良いことも悪いこともすぐキャッチして自分の内面に取り込んでしまう性格らしい。嬉しいこと、感動すること、モヤモヤすること、切ないこと、苦しいこと、悲しいこと。人一倍感情を取り込んで自分の中で膨らませてしまう気がする。それが溜まると胸がいっぱいになってすごく息苦しい。

だからお風呂で毎週泣く。人前で泣いて呆れられるのも嫌だし、心配されたり感情に干渉されたりすることは嫌。余計感情が振り回されてしまうからだ。だからお風呂は、涙と嗚咽をシャワーで消しながら泣く場所。

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ところが彼に会う前日は鼻歌を歌う場所になる。るんるんでお風呂に入って、隅々まで洗って丁寧に毛の処理をして保湿する。いつも会うたびに、肌が綺麗だ、すべすべだ、癒やされると褒めてくれるから。でも毛の処理をしていかなくても、汗をかいていてもスタイルが良い、可愛い、とどっちにしろ褒めてくれるので変なプレッシャーは無いのだけれど。

彼に会う前日はさっき述べたように楽しくお風呂に入るのだけれど、彼に会ってしまえばまたお風呂が面倒になる。一緒に楽しく夕ご飯を食べてお酒を飲んでしまったらなおさらだ。彼の家に泊まる夜は、「お風呂入るのめんどくさいー」と床でごろごろし、1日中外にいた汗ばんだ身体で彼に抱きつく。

「今日お風呂入らないで寝るー」
というと、潔癖な彼は意外にも
「いいよ」
という。彼は私の発言を否定しない。私が
「良いの!?本当に良いの!?」
と驚くと、
「いいよ、その代わり床で寝てね?笑」
とにやっと笑う。

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「やだあベッドで寝るー」
とベッドによじ登ろうとすると、ひょいっと抱えられてお風呂に連れて行かれる。抱えられたまま、やだやだとジタバタ暴れると、
「嫌なのね、じゃあ降ろすよ?」
とバスタブの中に落とされそうになる。

結果として、「やだーやっぱり自分でお風呂入るー」
と言わされることになるのだ。

お風呂に入りたくないという面倒な気持ちさえも否定せずに楽しいものに変えてくれる彼。そういうところが本当に好きだ。

お風呂に入りながら、彼との先程のやりとりを思い出して1人でくすくす笑う。彼の存在がお風呂を楽しい場所にする。なんだお風呂入るの楽しいじゃない。