「深夜に起きていてずるい!!」と思ったことはあるだろうか?

私は親が夜遅くまでテレビを観ている姿を見て、何度も思った。

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 「睡眠のゴールデンタイムは22時から~」とか、「理想的な睡眠時間は7時間だから、早めに寝るように。」とか世間ではあれこれ話があるが、一番面白い時間帯は実は深夜ではないかと感じることがある。テレビを点ければ、ディープで時に大人な内容の番組がやっていることや、深夜に食べるカップヌードルが格別であること。夜遅く大人たちが寝静まった頃に妖精や魔法使いが窓から入ってきて月の向こう側の世界へ連れて行ってくれる物語だってある。

「なんか悪いことしているなー。」と少しの罪悪感がありながらも、深夜の魅力に惹かれてつい行動してしまう。今の生活は朝型だが週末にエッセイを勢いで書くことや、 好きなゲームを好きなだけやり、気付けば「え!もうこんな時間⁉︎」て気付くこともしばしばある。

「好きなことして夜を過ごせるなんて、幸せ!」
  しかし心地よく夜を過ごせるようになったのはつい最近の話だ。

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 「24時間働き続けられますか!?」

古のキャッチコピーであるが、少し前までの自分はバリバリ中間管理職で1日中仕事のことばかり考えていた。キャッチコピーにふさわしい生活スタイルだった。

起床し簡単に朝食を食べ、電車に揺られながら出社。通勤中も携帯で会社のメールを確認し、トラブルがないかどうかを監視していた。出勤したら仕事のギアが加速し、夜遅くまでエンジン全開で作業。退社して帰路の電車の中でも、さっき確認したばかりのメールを見て穏やかであることに少し安堵。社会の歯車のような生活を2年間続けた。

あの時、まっすぐに仕事していた自分に「偉い!!!」と今は褒めてあげたい。

時々帰宅しても仕事をしなければいけないこともあった。作業時間が10分、20分ならまだ良いのだが、高い確率で作業が長引き0時を過ぎていた。

極力避けたい夜更かしでできれば他の人に任せたかったが、「自分たちの製品で多くの人に貢献する」という企業理念に目を背くことができなかった。貢献したい姿勢を強く持っていたことや管理職という立場により、自分が歯車でいる意義と企業理念がリンクしてしまい仕事をセーブすることができなくなってしまった。

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 「多くの人や会社への貢献が自分への喜び!だから働き続ける!」

いつしか仕事=自分になり、次第に夜更かしする理由には自分の意思は含まれなくなっていった。

作業が終わり無の感情でSNSを眺めていると、深夜に甘いお菓子を作る記事がオススメとして出てくることがあった。覚えている限りだが、眠れなくなったから深夜にケーキや軽食などを作って食べて幸福に満たされ、次第に夜が明けていく内容だったが「私もこのような夜更かしをしたい……」と隣の芝生を見ている感覚に陥りながら、眠りについた。

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どんなに頑丈なギアでも休まず使い続ければ、いずれは壊れる。結果として、私は壊れた。

医師からは「夜更かししないように」と緊急停止ボタンを押され、私の夜更かしは強制終了となった。それ以降0時過ぎまで起きていることは無くなった。
歯車時代と比較し健康的な生活を過ごせることはありがたいことだが、夜更かしできなくなって唯一残念だと思うことがある。それはSNSで読んだ記事を試すことができなかったことだ。

深夜という魅力的で少し寂しい時間に自分が好きな甘いお菓子を作って、1人幸福と味を噛みしめながら夜が明けるのを待ってみたかった。

「いつかこっそりやってみよう」と密かにその夜を待ち望んでいる。