私は神奈川県在住で、中学から東京の学校に通い、東京の大学に進学し、東京の会社に就職した。遊ぶ場所もほぼ東京だ。

だけど、東京はひどく疲れる。まず、人ごみがしんどい。あんなに疲れるものはない。

繁華街では、向かって歩いてくる人を避けないといけないから真っ直ぐ歩けないし、右から左から甲高い喋り声が聞こえてきて耳がおかしくなりそうだし、電車では隣の人と肌がくっつくくらい密着する。前の職場では、人が殺到する渋谷駅での乗り換えが嫌で、遠回りだけれど混雑が緩和されるルートで通勤していた。10m歩くだけで疲弊する街が、東京には沢山ある。

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でも、好きな場所もたくさんある。

大好きな古着屋さんがある高円寺。
渋谷のミュージックラウンジ。
知り合いが集まるバー。
Beatlesがかかる美容室。
大好きなジンを深く楽しめるジン専門バー。
小川の流れる音が心地よい渓谷。
木漏れ日が癒してくれる近所の公園。

好きな人たちもいっぱいいる。

それぞれの想いを込めた服装で集まるファッション仲間。
一緒に思索にふける哲学カフェのメンバー。
音楽の下で一緒に踊り騒ぐ友人。
中学時代から支え合っている親友。

東京は好きではないけれど、少ない緑に癒され、休日には友人との会話に花を咲かせ、ときめく服に出会い、なんとかここに留まっている。いいや、むしろもう、離れられないかもしれない。

一緒にいると疲れるのに、甘美な魅力に付き合い続けてしまうなんて、恋愛だったらすぐに別れろと言われるところだ。でも、東京にしかない場所がある。東京でしか出会えない人がいる。だから、東京ってすごいところだ、とも思うのだ。

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私と同じように、東京に疲れている反面、メリットを感じているから、好きな場所はあるから、好きな人がいるから、東京で暮らしている人は多いのではないかな。

そういう人たちのために、ホッカイロで手を温めて、美味しいココアを「どうそ」と、笑顔で差し出すようなことをしていきたい。新宿駅で落とし物を走って届けたり、バスの乗車口でベビーカーを一緒に持ち上げたり。誰にでもできるけれど、殆どの人が知らんふりしてしまうこと。そういうことを、積極的にやっていきたい。

それから、悲しい顔をしている人がいたら、じっくり話を聞いて、心を撫でてあげること。友達が疲れた顔でいたら、車の助手席に乗せて、一緒に美しい景色を見に行くこと。恋人が泣いているときに、そばにいること。家族の顔から笑顔が消えていたら、肩を揉んで甘いものを差し出すこと。

悲しくてたまらないとき、身近な人、数人に「私の良いところってなにかな」と聞くと、100%「優しいところ」と返ってきて、ピンとこなかったけれど、こういうことで良いなら、どんどん優しくしたい。たくさんの人が疲れているなら、私の長所がたくさん発揮できるということでしょうか?(笑)

東京は嫌いだけど、東京に優しさが足りないのなら、私がその穴を埋めてやる!というくらい開き直って、優しさを振り撒いていったら東京も案外楽しいかもしれない。

さあ、「優しくできるチャンスを逃さないゲーム」、スタート!