私は、あまり寝つきが良くない方で、よく頭の中でぐるぐる、失敗してまったことや、よくない未来を想像して、思考が止まらなくなって眠れなくなることがある。

「明日は朝早くから仕事だから、眠らなきゃいけないのに」と思えば思うほど、眠りから遠のいていってしまう。

そんな時、一度眠りを諦めて、体を起こしてみる。ぐるぐる考えて、重たくなった心を軽くするために、窓を開けてみる。

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その日は、雨が降っていた夜だった。雨の季節に生まれた私は、雨が嫌いではなかった。夜の静かな街に響く雨音が心地よくて、少し安心した。窓の近くに体を寄せて、アロマキャンドルに火を灯す。

心地よい雨音と、ゆらゆらと揺れるオレンジ色の光が、心拍数の速かった心臓をゆっくりと落ち着けていってくれた。

眠れないことに焦って、止まらなかった思考を打ち切ってくれて、私を安心感に包んでくれるアロマキャンドルと雨音。

眠れなくて嫌でたまらなかった時間が、心地よくて、眠れないことも「まあ良いか」と思わせてくれる、夜更かしの時間に変わった。

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「あと何時間しか眠れないなぁ」 とか「仕事中に眠たくなってしまうだろうなぁ」とか、「明日起きる時、辛いんだろうなぁ」とか 自分で自分の首を絞めている真面目な思考を、「だって、眠たくないんだから、眠たくなるまで夜更かしすれば良い」と、優しく肯定することができた。

雨音とアロマキャンドル。

そこに好きな音楽をかけて、その時間を、ゆっくりと味わっていくことにする。
眠れない時間ではなくなり 贅沢な夜更かしの時間になる。

目を閉じて、暗闇を1人で見つめていると、夜の時間は途方もなくて、抜け出せなくなってしまうけど 目を開けて、ゆらゆらあたたかい明かりを見つめているだけで、救われる心があるなんて。

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そんな小さな救いを忘れないでいたい。

私のことは、私が救ってあげなくてはいけない。1人でも、暗闇を照らす方法を、知っていなくてはいけない。 

そうやって、思考をやめて耳と目を、私の好きなもので満たしたら少しずつ、夜更かしの出口が見えてくる。思考がぷつんと途切れたらだんだんと、柔らかい眠気が私を迎えにくる。

贅沢な夜更かしは、何をしたって許される。だって、眠らなくていい時間だから。

今日をもう少しだけ、内緒で続けて良いから。

1人きりの部屋のはずなのに親から隠れて、こっそりと目を開けていたときのような気持ちになるのはなぜだろう。

夜はほんとは優しいことを、私に教えてくれる。

眠れない時間から、夜更かしに変わる時。私は私を少しだけ甘やかす時間。
そんな日があってもいいんだよって教えてあげよう。

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 夜更かしの理由はいつだって、私を甘やかしてあげてるのだと思う。

ダメなこと、いけないことではなく 私が幸せになるために必要な時間。
なくても構わないけど、なかったらつまらない。

眠れない日にする夜更かしも、眠りたくないと足掻く夜更かしも、楽しく騒ぐ夜更かしも、全部自分のためなら、そんな贅沢なことはない。