先日までこのテーマで居心地のいい場所の見つけ方についてダラダラ書くつもりだったが、ある特集を観てどうしても書きたい内容が浮かんだ。勢いで書いていこうと思う。

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ニュースを見て知っている方は多いだろう、先日そごう・西武の売却をめぐって社員がストライキを実施し西武池袋本店が全館臨時閉店となった。私が観た特集では、そごう・西武の労働組合のストライキ実施までの半年間が映されていた。その内容にはそごう・西武の経営や親会社側や買収先の見解も含まれており、この特集だけで「どちらが悪いか?」と断定することは自分にはできなかった。しかしそごう・西武の労働組合側は「社員を守るため、昔から愛してくれたお客様のため、地域として守るため」と自分たちの居場所だけでなく、長きにわたって利用してくれた方々の居場所を守るためにストライキを決行した。その姿に心を打たれ、夜も寝付けないほど興奮してしまった。

今回のエッセイテーマとはかけ離れているかもしれない。しかし、この出来事を何かしらの形で残したかった。

自分たちの居心地のいい場所は何かの拍子で無くなってしまうことがある。幼い時に誰かの都合で遊び場が無くなってしまった経験がある方も多いだろう。それをただ見ているだけや諦めることもできる。しかしそごう・西武の多くの人が自分だけでなく、目の前にいる人たちの大切な場所を少しでも守るために意思を掲げ、行動したのだ。これほどまで愛してくれたお客様や一緒に働く仲間たちへの強い気持ちが無ければ行動できないのではないか?

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 特集を観ながら、ある出来事が思い浮かんだ。

コロナウイルス感染症が流行る半年くらい前に友人に小さな社会人サークルを作ろうと誘われた。サークルの目的は「皆にとって居心地のいい場所をつくる」だった。各自友人を誘って日帰り旅行やバーベキュー、忘年会、花火大会などを主催しながら、メンバー一人ひとりが自然体で過ごせる環境を作ってきた。

「社会人になってから新たな人との出会いや、家以外に居心地の良さや自分の大切さを感じられる場所が無くなったから、こういうのが新鮮に感じる」

サークルイベントに参加した人からそのような感想をもらった時、他人に貢献できたことが嬉しかった。参加してくれた人にとって、そして自分にとって更に居心地のいい場所を広げていこうと躍起になった。

しかし男女が集まると何かしらのトラブルが起こってしまうのが常。細かな人間トラブルが相次ぎ、サークルから人が離れていった。最初は自分もトラブル解決の手伝いや、他のメンバーに気配りするなどしたが、自分では解決できないことが増えていき緊張の糸が緩み、そして切れた。次第に「自分だけが居心地よければ十分」と思うようになってしまった

その後のコロナ禍もありサークルは自然消滅してしまった。
私たちは自分にとっても他人にとっても居心地いい場所を守ることはできなかった。

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「あの時、ストライキ実施を決めた人たちと同じ気持ちを持っていれば、もしかしたらその場所は皆の居心地のいい場所として今も残っていたのかなー」

後悔しても仕方がないが、この特集を通じて当時の自分の自己中心さや不甲斐なさを改めて反省した。

この出来事は多くの人に様々な強い印象を与えた。しかし、時が経てば忘れ去られてしまう。

同じことを書くが、私はこの出来事を忘れたくないと思い文章を起こした。

将来、また新たに自分にとっても他人にとっても居心地のいい場所が生まれ、そして突然その場所が無くなりそうになる事態に再度直面するかもしれない。その時自分だけでなく他人の居心地のいい場所を守ろうと立ち上がった人たちを思い出し行動できたら、と思うのだった。