39.1kg。
何で。昨日より0.7キロも増えている。確かに、久しぶりに昼は外食した。だけど野菜メインだったし、炭水化物は少ししか食べていない。おなかが空かなかったから、夕食は食べなかった。1日の総摂取カロリーはオーバーしていないはずなのに。

朝起きてトイレを済ませた後、体重計に乗るのが日課になったのは、いつからだろうか。昨年秋に第一子を出産し、1年で10キロ痩せた。母乳育児に加え、慣れない子育てでご飯を食べる余裕がなく、自然と減っていった。

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元々、食べることが好きだった。学生時代に襲来した食べ盛りと、いじめによるストレスで、俗にいう“爆食”が趣味になった。クレープ、パフェ、菓子パン……。女子の心をつかむキュートな見た目とは正反対に、カロリーは決してかわいくないスイーツの食べ歩きにハマった。気が付けば、高校2年生の時、身長154センチで体重は過去最高の58キロを記録した。
「痩せなければ」。その気持ちは重々あった。年頃の女の子なのだからおしゃれしたいし、かっこいい男の子とデートだってしたい。時間があれば本屋でファッション雑誌を立ち読みし、流行を参考に服を購入したり、モテメークを研究し、つけまつげやカラコンに挑戦したり、自分なりにできる努力をした。
男性から声をかけられるのは、当時いつも隣にいた、細い友達ばかりだった。160センチを超える高身長で、私より軽い、50キロに満たない体重。スタイルのいい彼女といる限り、どんなに足掻いても、ぽっちゃり体型というコンプレックスはカバーできなかった。
「黒スキニーを着こなしたい」

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当時の私は、スカートばかりだった。正確には、スカートしか選べなかった。バレーボール部で筋肉質だったこともあり、アパレルショップで売られているズボンは、恥ずかしながら入らなかった。何とか着られても、太ももの太さが強調され、とても人に見せられなかった。脚がすらっとのびて、かわいさと美しさの両方を兼ね備えたファッション。彼女がよく着ている服。ないものねだりと分かっていたけれど、ずっと理想を抱いていた。

社会人になる頃、憧れは実現した。年を重ねるにつれて食べたい欲求がおさまってきて、最高体重を記録した6年後には、自然と10キロ減っていた。決して思い描いていた、かっこいい姿にはならなかったものの、一般女性のサイズが着られるようになっただけで進歩だった。

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さらに8年たった今。さらに10キロ痩せた。かつて、自分に惨めな思いをさせていた、スタイルのいい友達より細くなった。黒スキニーは余裕で着られるようになった。
だけど、自分に満足できずにいる。0.1キロでも体重が増えていると、その日はなんとなく気分が落ち込む。無意識のうちに食べる量を減らしてしまう。痩せれば自分に自信が持てると思っていたけど、そうじゃなかった。

「もう少し太った方がいいよ」。周囲に言われるようになり、若干の快感を覚えている。高校生の時から15年近く、デブが食べているとみっともないから、と人前で自由に食べることを我慢し続けてきたから。人に承認されてやっと、許可された気がする。もう、食べていいんだ、と。
体重という不確定な数字にとらわれて気付いた。昔も今も、今の自分を好きにならなければ、自信は持てない。私にとって本当に必要なのはきっと、人と比べたり、数字という外的要因に一喜一憂したりせず、ありのままの自分を受け入れること。そして食べたいという気持ちを含めて、感情に素直になること。私は、私の力で満たしていくしかないのだ。黒スキニーを着た時、痩せすぎて太ももとおしりで余ってしまう生地部分を埋めるように。