4年前、社会人1年目の夏に、私はあるワンピースを買った。ネイビーの生地にマスタード色の花模様が散りばめられた、キャミソールタイプのものだ。普段は「断捨離」と称して定期的に服を処分する私だけれど、この服だけは捨てられない。私を、とあるコンプレックスから、ほんの少し解放してくれた存在だから。

幼い頃から身長が同年代より10cmほど低かった私は、服選びに悩むことが多かった。トップスを着れば袖が長すぎて幽霊みたいになるし、ロングスカートを履けばウェディングドレスのように引きずってしまう。結局いつも手に取るのは、無地のTシャツとジーンズのパンツ。ジーンズは丈を詰めなくても裾を折れば着こなせるから、重宝している。

◎          ◎

そんな私にとって、ファッションを楽しむことは最も縁遠い行為だ。トレンドの服も、ショップで一目惚れした服も、身長が理由で何度諦めたことだろう。一縷の望みをかけて試着に挑んでは、撃沈する。その度に私は、おしゃれを楽しむ資格がない者としての烙印を押された気分になる。いつしか「私が心から着たいと思える服」から目を逸らし、「こんな私でも着られる服」を探すのが癖になっていた。

そんな私が4年前に出会ったのが、冒頭で触れたワンピースだ。色味、柄、形と、どの要素をとっても私の好みにカッチリとはまる奇跡のような服だった。しかも幸運なことにそのワンピースはミモレ丈で、低身長の私でも引きずらずに着られる。「低身長でも着られること」と、「低身長の人にも似合うこと」は別物なのに、気づけばそのワンピースを家につれて帰っていた。

◎          ◎

家路についた私は、早速ワンピースに合わせるアイテムを探すため、部屋中を漁った。色付きのワンピースだから、合わせるトップスはモノトーンがいいかな。いつも着ている黒のTシャツを合わせれば、ほどよくカジュアルな印象になる。スニーカーを合わせたら夏のお出かけにぴったり。でも、せっかくならヒールと合わせてスタイルよく見せたい。

ここで気付いたことが2つあった。1つ目は、私は意外にも「花柄のワンピース」という可愛らしい服装が好きだということ。「着たい服」ではなく「着られる服」を探し続けていた私は、無意識のうちに自分の好みに蓋をする癖がついていたようだった。そんな自分に気づけたことは、大きな収穫だった。

◎          ◎

2つ目は、体型を理由におしゃれを諦めなくていいのだということ。今まで身長を理由に何度もトレンドのおしゃれを諦めてきた。中でもマキシ丈ワンピースが流行ったときの惨めさといったらない。でも、マキシ丈が無理なら、ミモレ丈を選べばいい。身長を理由に着られない服はたくさんあるけれど、自分にしか着られない服でおしゃれを楽しめばいい。だって、現に私はそれを実現できる1着に出会えたのだから。

あの出来事から、4年が経った。今さら身長が伸びるはずもなく、今でも「着たい」と思った服を身長が理由で諦めることは少なくない。でも、もう悲観しない。私が心からおしゃれを楽しめる1着に、また出会えると信じているから。

そんなことを教えてくれたワンピースを身に纏い、今年の夏もおしゃれを楽しんだ。