一人暮らし時代にちょくちょく利用していた喫茶店が閉店していたことを知った。

再開発によりその建物自体がなくなるらしく、お店自体の理由ではないところがまたなんとも悔しい。他に入っていたテナントの中には移転営業するところもあるみたいだから、その喫茶店もそうなってほしいものだけど、でもきっとここで終了なんだろうな。寂しいな。

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 私は喫茶店やカフェという空間が好きだ。しかし、SNS等で内観に惹かれても「コーヒー専門店」「自家焙煎」といった文言を見ると、お呼びでないなと断念することも多い。なぜなら私はブラックコーヒーが飲めないから。

喫茶店好きでありながらコーヒーが飲めないという悲しき事実。そもそも喫茶店は程度はあれどコーヒーにこだわっているところが多く、雑誌等の特集でも豆の産地や淹れかた等の話は付き物。ネルドリップやサイフォンといった名前は少しずつ覚えてきたものの、その違いを試すことができない。そのため、いつまでも無機質な単語としてしか認識できないのだった。

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とはいえ、大人になるにつれてその苦味に含まれる美味しさがわかるようになると思っていた。お酒のように飲む機会を増やせば慣れていくものだろうという期待もしていた。しかしそれは儚い夢なのかもしれないと最近感じ始めている。なぜなら、高確率で貧血のような症状が起きるからだ。三谷さん、コーヒーと相性悪いのでは?

しかしこの貧血的なものはここ1年くらいのことで、以前は胃の不調が主な症状だった。どのみち調子悪いじゃんという話だのだけど、統一されていないということは何かを改善すればまだ望みはあるのかもしれない。ちなみに現状、なんの心配もなく飲めるコーヒーはコメダ珈琲店の限りなく白に近いミルクコーヒー(カフェオレではない)だ。

あ、上島珈琲店のミルク珈琲も美味しいですね……。両方「ミルク」が先にきているあたり、はやり苦手なんだなあ、とつくづく実感するのだった。

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閉店してしまった喫茶店は、コーヒーが飲めないことを気にする必要がないところだった。

店の前にメニューのサンプルがずらりと並ぶような昔ながらの佇まいで、つまり食事やスイーツメニューが豊富に用意されていた。良い意味でコーヒーにそこまで力が入っていない(ように見える)ので、気楽に頼むことができる。そして食事もスイーツも美味しい。

特に私はオムライスプレートと、マロンパフェが大好きだった。オムレツは大きすぎず、その代わりにサラダが付いているという構成が良かったし、季節問わずマロンアイスが食べられるのも非常に貴重だった。

しかしこのお店の1番のポイントは、友人とゆっくり話せる空間だったということ。アクセスが良く、客席も多め。時間によってはサラリーマンやおばさまグループでいっぱいになることも多かったが、夜は結構狙い目で、オムライスやパフェを食べつつ、容器がカラになったあとも混雑状況を見つつ延々と語っていたものだった。

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大学の同期と息抜きを兼ねて、会社の同期と研修終了を労って、なかなか会えなくなった友人との再会場所として――様々なシーンでお世話になった。もうあの空間にいられないのかと思うと、じんわりと寂しさが染み出してくる。次からどこを集合場所にすれば良いのだろう。

その喫茶店では、ついぞコーヒーを飲むことはなかった。克服は諦めていないが、それとは別に良い意味でコーヒーの存在が薄い第二の喫茶店を確保しておきたいような気もしている。