何でもできそうで、何者にでもなれそう。
私にとっての夜はまさに宇宙と同じ、無限に広がる私だけの世界だ。
私は元来0から1を生み出すことが好きだ。
業務上何かを生み出すということが少ないために、社会人になってからは何かを生み出したいという欲求が高くなったように思う。
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エッセイや小説を執筆することもあれば、最近買ったイラストソフトで絵を描いたりすることもある。
もちろん昼間も創作活動を行うのだが、自分の部屋で作業するということが苦手なため、ほぼ100%カフェに行って作業をする。
そうすると今度は人の目が気になりだす。
執筆はまだ良くても、練習し始めたばかりのイラストを通りすがりの人に見られても良いほどにはまだ自信がない。
そうして人目を気にしながらの活動は思うように進まず、結局出来なかったと、ため息をつくことも多いのだ。
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そんな家での作業が唯一捗る時間、それが真夜中だ。
部屋を暗くして、PCだけの灯りで過ごすその時間は、視覚的情報の大部分が遮断され、人目を気にすることもしなくてよく、心置きなく創作活動ができる。
夜更かし自体は歳のせいかそう頻繁にできるものでもないが、一度集中して取り組み始めると、外が薄明るくなるまで打ち込むことができる。
誰にも邪魔されない私だけの世界を築くことができる。
まさに夢のような世界を私は手に入れることができるのだ。
人目を気にしなくていいというのは非常に利点が多いようで、大体夜に考えたことというのは面白かったり、昼間に思い付かないものが多い。
どうしても孤独や寂しさといった悲観的感情が生まれることもあるが、何かを創造するという意味では、それすらもスパイスとなっている。
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そんな利点の多い夜更かしだが、シンデレラのように夢から醒めるのも事実で、私の場合は、世の中が少しずつ光に照らされ始めると唐突に魔法が解けてしまう。
「うわ、次の日だ」
私の中で夜更かしをしている間は、日を跨いだとしても前日が永遠に続いている感覚だ。
本当はそんなことはないのに、なぜか普通に過ごしている中では味わえないプラスの時間を過ごしている、そんな気がするのだ。
しかし、夜が明け始めることで私は次の日になっていることを認識する。
「やばい、今日が勿体無い」
急いで2時間後にアラームを設定して、自分が起床することを信じて眠りにつく。
大体アラーム通りに起きられることなどない。
「ああ〜、まあそうなるよね」
陽が随分高くまで昇った頃にのそのそと体を起こし、次の日を生き始めるのだ。
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結局プラマイ0のような夜更かしではあるが、夜だからこそ生まれた作品があるのも事実で、そういった意味では価値のある時間を過ごしていると思う。
たまに早寝早起きをして、朝からカフェでモーニングを食べた時は、すごく充実した今日を過ごしていると思う瞬間もある。
しかし家族や友人と休日が合うことが少なく、一人で時間を過ごすことが多い私のやることなどたかがしれていることが多い。
結局早々に帰宅してダラダラと過ごすのがオチなのだ。
そう思うと、執筆やイラストを描きながら夜中に辛ラーメンを食べる背徳感は体にはとてもいいとは言えないが、少なくとも心の栄養には繋がっているように思える。
夜更かしすると次の日への影響が大きくなってきたと感じている今日この頃ではあるが、自分の体と相談しながら背徳感と想像力を求め、これからも夜を駆け抜けていきたい。