他人と一緒にご飯を食べに行くとき、私は居心地のよさを考慮する。他人とご飯を食べるというのは、ただお腹を満たすためでなく、相手との時間を楽しく過ごすことが目的だからだ。

他人と一緒にご飯を食べに行くとき、お店の選択肢として外すジャンルが2つある。この2つのジャンルのお店へ他者と行くと、居心地が悪いからだ。

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1つ目は、ラーメン屋、うどん・そば屋など麺系を提供する店である。

恥ずかしながら、私は麺をすすることができない。ずぞぞぞぞッ、と、空気と共に口に吸いむことができないのだ。

音をたてて麺をすすると、かおりをダイレクトに感じることができ、より美味しく感じるので、科学的に見ても合理的な麺類の食べ方なのだそうだ。だから、私も本当はすすって食べたいのだが、できない。吸う力が弱いのか、口の形が良くないのか、なにか間違えているのか、原因は不明である。

そんな私が麺類を食べる時は、箸を使って少しずつ口に運んでいく。レンゲがあれば、そこに麺を折りたたんで乗せ、そこから食べる。

私のこの欠点を知らない人と食事の席を共にすると、「気取っているのか。上品ぶっているのか」「日本人なのに麺をすすることができないのか」と思われていそうで、居心地が悪い。しかし、すすれないことを説明してから食べるのも面倒である。

しかも、すすることができない分、食べる速度が遅い私は、食べ終わるタイミングがずれてしまうことも多い。昔はよく、私より先に食べ終わった人から麺が伸びきっていることを指摘されたし、早く食べ終われというプレッシャーを感じていた。

そのため、麺系はお店の選択肢には入れない。

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もう1つ、避けるジャンルのお店は回転寿司である。

特に、先輩や後輩などの立場が異なる人、気を使うべき人と複数人で行く回転寿司は、なんとも居心地が悪い。

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まず、どこに座るかが問題だ。

先輩にゆっくり食べてもらいたいなら、自分がレーン側に座ってお皿を取る役に徹するのがよいのか。もしくは、先輩が皿を取りやすいように自分は通路側へ行くのがよいのか。

そうすると、お茶を作るためのお湯は、先輩に頼むことになるし—。

少なくとも、流れてくるネタを、いちいち振返って見るのは大変だろうから、お皿の流れの下流側の位置に座ってもらうのがベストだろうか。

そこまで考え、荷物の量や席の込み具合も合わせて配慮し、席に着く。

続いて、どうやって注文するかが悩みどころとなる。

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 回転寿司の注文スタイルには、人によっての流派があると思っている。

まず、食べたいものを少しずつ頼んでいくスタイル。

他には、食べたいものを席についたらすぐに何皿も注文しておくスタイル。

レーンを流れてくるネタを見て、これぞと思うものを食べるのが回転寿司の魅力の1つであるから、前者の注文スタイルの人が多いと思っているが、この場合、自分以外の人がいつまで注文するのか、見極めるのが難しい。

これが、定食屋さんへ行って定食を食べるのだとしたら、お盆に乗ったごはんと汁とおかずを食べ終われば、食事終了となるだろう。しかし、回転寿司であれば、1人何皿食べるのかなんて決まりがないので、食事の終わりが見えない。

満足したら食事終了となるが、他人の腹具合はわからない。そのため、食事スピードを合わせるのが難しく、居心地よく食事することが私にはできない。

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そんなわけで、私は他者とご飯を食べるシーンでは、麵類のお店と回転寿司は選ぶことは少ない。

他者と一緒に食べるのは好きだ。美味しいものを食べて、 「これ、美味しいね」と共感できる相手がいる空間はとても心地良い。

そんな素敵な時間を過ごすためにも、麺と寿司という、2つのジャンルは避けている。

しかしながら、私は麺類も海鮮も大好きだ。だから、家族や気の置けない友人とは、うどんもラーメンも回転寿司も、一緒に食べに行く。

麵類と寿司は、普段なら自分から進んで選ぶお店ではない。逆に、これら料理を私が一緒に食べに行きたいと思える人は、私にとっての「居心地のいい相手」なのだろう。

というわけで、まずは私と一緒にイタリアンかカレーを食べに行きましょう。ピザやカレーの美味しさを、何回も一緒に共有できれば、きっと、「一緒に蕎麦を食べにいきたい」と思える相手になってもらえるはずだ。