平日、仕事が終わった後、私は仲間に会いに行く。たった二時間だけだけど、大好きな仲間に会いに行く。仕事が休みの土日にも、私は仲間に会いに行く。十時間以上その場に滞在することもあるくらい、私の心が落ち着く場所。
まるで実家のようとも言えるくらい居心地のいいこの場所とは、何を隠そう、私が高校一年生の時から十年以上続けているアルバイト先の飲食店である。
私は、本業と呼べる仕事をしつつ、この飲食店で働いている。ここで働き続けるために、副業可能な会社を探したほど。それくらい、私にとっては大切な場所。
年々、私を取り巻く環境が変わろうとも、この店は、私の居場所として、心の拠り所として存在し続けている。
さて、そんなアルバイト先で私がどんな風に働いている(と言えるのかどうか、もはや自分では分からないが…)かというと…。
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平日は夜、都心での本職の仕事を終え、片道一時間以上の電車に乗り、自宅最寄りのド田舎の駅から歩くこと三十分。「おっ、お疲れ様!」とお互いに労いの言葉をかけ合い、シフトに入る。一時間だけ接客し、残り一時間は閉店作業。やるべきことをこなしつつ、仲間たちとついつい声をあげて笑い合ったりしてしまう。そして、皆揃って家路につく。星空の下、無事に一日を終えた安堵感に包まれながら。
土日はと言えば、朝10時と少しゆっくりめの時間からシフトがスタート。朝のゆったりした時間に浸りながら準備を万端にする。そして、お昼のピークの時間。忙しいながら、皆で協力し合って声をかけ合って、と、まるで学生時代の部活の様なこの空気感が大好きだ。
そして、昼過ぎに長めの時間の休憩を挟んで自分の時間を充実させつつ、仲間たちとの会話に花を咲かせる。そして、夕方から夜にかけてまた忙しい時間に一暴れし、帰路に着く。他の予定のない土日は、ほぼこのスケジュールである。きっちり八時間働いて(と言っていいのかどうかは定かではないが…)本職の休日を終える。
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今でこそこんなに心地よくいられるこの店も、アルバイトを始めた当初は行きたくなくて仕方がなかった。慣れない仕事に、馴染めない年上の先輩ばかりの環境。シフト中、仕事が出来ず怒られてばかりで、本当に何度も辞めたいと思っていた。
それでも、辞められない理由があった。元々、高校生時代に、無職の父の影響で家計が火の車だった我が家を助けたいと思い始めたアルバイト。アルバイトを始めるにあたり、私にはどうしても譲れない条件があった。それは、“毎週、シフト時間を変更出来る”こと。私の通っていた高校は、いわゆる進学校で、こと勉強面に関しては熱を持っていた。
土曜日に、授業やら特別講習やら課外活動やらがあり、スケジュールが変則的だったのだ。その為、学校とアルバイトを両立させるには、シフトの融通を利かせられることが、どうしても必要だったのである。辞めたくて辞めたくて仕方がなくても辞められなかった理由は、偏にこれである。私が知り得る限り、「毎週シフト変更可能!」と公にしている職場はここだけだったのだ。通勤途中の道で、涙が出てくるのを感じながら自転車を漕いでいた日々であった。
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そんな日々を越え、今では、勤務というより趣味、というよりもはや習慣のような存在のアルバイト。食事に睡眠、お風呂に歯磨き、アルバイト。こんな具合の位置である。仕事に向かうという心構えなんてものはなく、生活の一部として店に向かう。ついでに仲間に会いに行く。
そんな感覚で働いていていいのかと自分でも思うが、店長から直々に「その気の持ちようでいいから来てほしい(笑)」と言ってもらえているので、お言葉に甘えさせてもらっている。果たしてこの先、何年ここに居座らせてもらうことになるのか分からない。気の済むまで、体力のもつ限り、この第二の実家にいさせてもらえたら…、と思いながら、今日も私は、本業が終わったら仲間に会いに行く。