私の居心地の良い場所は、今暮らしている部屋である。

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社会人になったことをきっかけに一人暮らしを始めた私。それからしばらく経ち、転職と引っ越しを経験した。そして見つけたのが、今の部屋。ネットで見つけた物件だったが、間取りがストライクでとても気に入った。すぐに内見の予約が取りたいと不動産会社へ連絡し、内見をさせてもらうことになった。

部屋に入ってみると、広々とした空間がそこにあった。キッチンやほかの部屋なども十分にある。これまで住んでいた部屋がとても狭く、足を伸ばせば壁に付きそうなくらいだった。ベッドを2台置いてしまえば足の踏み場はなくなるくらいの狭さ。実家の自分の部屋ではなく一人暮らし用の部屋のはず。くつろげない部屋では疲れも取れるはずがない。

ストレッチをしようとすると、机をどけて、周りに置いている本やクッションもどけなければいけない。ヨガマットを収納から出して引けば、頭の先は窓のサッシに届きそうなくらい近く、足は部屋と廊下を仕切る扉に届きそうなくらいだった。要するに、自分の身長くらいの部屋。窮屈なのが当然であることがわかるだろうか。

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仕事と狭い部屋は疲れを蓄積させた。早いうちに引っ越そうと思い、部屋を探した。当時は働いていた職場から家までが近かったので、職場をやめるタイミングであったこともあり、まったく関係のない場所へ引っ越そうと決めた。比較的遠い場所で、新しいコミュニティを作りたくて、今の土地を選んだ。

ベッドタウンとしても機能しているこの地域なら、自分らしく過ごせるのではないかと思ったのだ。この土地周辺に候補を絞り、条件を設定して家を探す。1つのサイトだけではいい物件は見つからず、2つ3つほど参考にした。どれも決めかねていたが、とりあえず話を聞いてくれる不動産会社に行き、話をする。追加で紹介してもらった物件もともに候補として考えることにした。

物件を決めるときは、思ったよりもスピーディーに事が運んでいく。できるだけ早く返事がほしいと言われて、半ば急かされて次の段取りを組む。そんななかで、もっと良い物件が見つかるはずと思い、住みたいと思う物件を探し続けていた。

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ネットサーフィンをしていたある日、これだ、と思う物件を見つけた。それが今の家だ。駅からは少し距離があるものの、間取りも周辺の環境も問題ない。むしろ総合的に考えても良いところしか見つからないのではないか、というくらいの物件だった。

早速内覧の予約を取り付けて訪問することが決まった。みてみると、思っていたよりも好印象。部屋の広さが特に気に入った。部屋の形や、キッチンの位置なども気になるので、こだわりは強いほうかもしれない。その私がドンピシャの物件を見つけられたのだから、とてもテンションが上がった。当然この物件に決めた。引き渡しまでワクワクしながら時間を待つ。引越し作業も、新しく住む場所の清掃も張り切って行った。

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 家具は今まで使っていたものの他に少し補充した。といっても主にベッドを導入したくらいだが。家具を配置してみると、さらにテンション上がった。これからこの部屋に住むのだという希望とともに、やはり最高な家を見つけられたのだと自分を褒め称えた。自分を褒めているのは、今でもそうだ。理想の間取りであることに変わりはなく、今も帰宅すれば、出会えてよかったと心から思う。

自宅ではあるが、くつろぐ場所ではある。できるだけ出会ったときのままにしておきたい場所でもある。この部屋は、自分にとって一番居心地の良い空間だ。もちろん、足を伸ばすこともできる。どこかに体をぶつけそうにならないくらい部屋の広さがある幸せを噛み締めている。

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暮らす環境は、とても大切な意味を持つと実感した。広さがあれば、羽を思う存分に広げることもできる。窮屈さを感じないので、手や足をめいっぱい伸ばして大の字になることも可能だ。何かを片付けなくてもストレッチができる環境にあることも最高。とにかく出会えてよかった。

私が居心地の良さを感じる場所は自宅である。一期一会で出会った最高の間取りと、思いっきりくつろげる部屋。自分らしさも取り戻せる、最高の場所なのだ。