旅先にて買ったお土産を食べると、またその土地に赴きたくなる。
でも今回はそれだけじゃなく、大好きな先輩にまた会いたくなった。

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北海道にいる、私が勤めていた職場の先輩、森さんは面白い人だ。
何が面白いのかというと、職場に勇者の剣を2本背に挿し、職員に「お疲れ様で〜す」と何食わぬ顔で挨拶する日があれば、サメの被り物を被ってギターを弾き語り熱唱する動画をSNSに投稿したり、不思議なダンスをなんの前触れもなく踊りだしたり……。
そんなユーモラスな森さんは看護師で、テキパキ仕事をこなし、患者の事を考えた看護をするため日々審念熟慮している。

私は、そんな森さんに憧れて看護師になった。
私が看護学校に行っている間に、森さんは私が看護学校に行くまでに勤めていた職場を辞めて北海道に帰ったと聞いてたので、看護師になった私は、森さんに逢いに北海道に飛んだ。
何年かぶりにあった森さんは、色黒でムッキムキになっていて私が「ボディービルダーみたいですね!そこまで鍛えるの大変やったでしょう??」と聞くと森さんは「まぁねぇ。でも筋肉は裏切らないから、やればやるだけ結果になるよ!」と楽しそうに、プロテインや食事、筋トレの事を話しだした。
どうやら森さんは今、肉体改造に凝っているらしく、毎日ジムに通い身体の至る所を鍛えてるようだ。

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森さんの北海道おすすめスポットを巡りながら、お互いの近況を話した。その時に森さんは今の職を辞めようと思っていることを話してくれた。
「看護師ってさ。なくちゃならない仕事なんだけど、すんごいボヤってしてるんだよね……。薬剤師は薬のスペシャリストだし、医者は患者を治すでしょ?でも看護師って療養上の世話をしてる訳だけど、それってなに?って疑問に思う。それにこんなにも大変な思いしてるのに、給料安いし……患者から暴言も吐かれるし……。それと違って筋トレってすぐ結果出るし、筋肉のことを勉強してたらめっちゃくちゃ楽しいんだよね。看護師はまじで楽しくない。こんなので人生終わるのどうなのって思うと、やっぱり好きなことを仕事にしたいなぁって」
森さんはそう言って、筋トレのユーチューブや本を見せてくれて、顔をほころばせながら筋トレの話を夜通しした。

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森さんはほんまに筋トレが好きなんやと、私はふつふつと感じた。そして、きっと森さんは近いうち、看護師を辞めて、好きな筋トレの仕事につくんだと感じた。
日本に看護師は150万人いるけれど、看護師の資格を持ち、看護師として働いていない人数は70万人いるとされている。

国家資格で、一生どこでも使えるものであるのに、その資格を持って他の仕事についている人がいるのか、ホントの事はわからないけれど、森さんのように看護師の仕事に疑問を感じ、他の仕事を選ぶ人もいるのだろう。
看護師は万年人手不足だけれど、人生は一度きりだからこそ、その人がしたい仕事について人生を謳歌するのがいいと私は思う。 

「森さんはほんまに筋トレが好きなんですね!絶対それを仕事にしたほうがいいですよ!森さんなら絶対できますよ!」
森さんにそう言うと森さんはおもちゃを貰った子供みたいに笑って「やっぱり!!?」と言った。
北海道の旅から数日経つけれど、森さんは看護師の仕事をしながら筋トレに勤しんでいる。でも辞めたいという気持ちは日に日に大きくなっているみたいだ。
看護師として憧れた森さんが、その仕事を辞めてしまうのに、哀愁を感じるけれど、いつか森さんのなりたい自分になれればいいなと思いながら、私は北海道で買ったクッキーを休憩中に食べた。