今年の6月から、脱毛に通い始めた。全国チェーンの美容クリニックが運営する医療脱毛だ。
脇とVIOを各6回のコースで契約した。このクリニックは、そもそもの値段設定が安めだった。それに加えて、平日しか予約できないプランを選択し、クーポンも使用したため、相場よりもだいぶ値段を抑えることができた。

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安い理由として、これかな、と思った項目が1つある。

事前にそのクリニックのホームページをチェックしていて、気にかかった文言があった。それは、「肌の状態のチェックを男性医師が行う場合がある」という注意書き。サイトの医師紹介の欄を見ると、女性よりも男性の方が多かったので、その確率は割と高いのだろうと察した。

一瞬、じゃあ他のクリニックにした方が良いかな、という思いが頭をよぎった。

しかし、そうすると値段が上がってしまう。私が通える範囲にあって、医療脱毛を行っているクリニックだと、ここのような平日限定割引やクーポンを導入しているところは他になかった。私の職場はシフト制なので、平日でも休みだったり、昼出勤だったりすることが結構ある。せっかく平日に通える立場にあるのだから、それを活かして割引を適用させたい、という気持ちがあった。
それに、ここのクリニックはエラと肩のボトックスで通っている場所だった。通い慣れている場所というのは、なんとなく安心感がある。駅からのアクセスも良いし。

というわけで、結局私はこのクリニックで契約した。

男性医師からのチェックは、抵抗がないわけではなかった。私はこれまで、婦人科などで男性医師にあたった経験が無い。避けられるなら避けたいな、とは感じた。

しかしその思いは、2万円弱の差額をプラスして他のクリニックを選択するほどには大きくはなかった。

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1回目の脱毛当日。
クリニックに到着し、受付して、実際に脱毛を行う部屋に通された。

上はタンクトップ、下は全部脱いで紙パンツに履き替えるようにとの指示を受ける。紙パンツはTバックのような形状で、前側には多少の面積があった。

言われた通りに着替え、診察台の上で仰向けになり、女性の看護師さんからの肌チェックを受けた後、「今カウンセリングの時間の都合で男性医師しかいないんですが、よろしいですか?」と確認された。

事前に承知して契約しているのだから、了承せざるを得ない。相手は医者なのだ。仕事だし、見慣れていて今更何か思ったりしないだろう。それは分かってはいる。しかし、それでもやはり、多少の緊張が胸に走った。

少しすると男性医師がやってきて、私の頭側に立った。バンザイのポーズをとるよう言われたので、そうした。看護師さんは「失礼します」と言って紙パンツの前側をめくった。

「はい、大丈夫です」
そう言うと、男性医師はすぐに退室した。めくられてから「大丈夫です」が発されるまで、1秒あるかないか。本当に、一瞬の出来事だった。

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繰り返して言うが、私が契約したのは、脇とVIOのコースである。とりあえず、脇とVの部分に関しては彼の視界に入ったことだろう。あの1秒で脱毛をして良いかの判断を下せるのかどうかは怪しいところだが、見たことには間違いない。

しかし、IとOの部分については、見てすらいなかった。

多分、相当忙しいのだと思う。実際、いつ行ってもこのクリニックの人達は忙しない。接客がテキトーとか、そういうことは無いのだけれど、とにかく急いでいる様子が見てとれる。

だからきっと、このクリニックでは一瞬だけのチェックが常態化しているのだろう。そして多くの客は、じっくり見られることを避けたいと思っている。

「ちゃんとチェックしていないんじゃないですか?」なんて指摘する人はいないに違いない。当然、私も何も言わなかった。

しかし、この形骸化しきった確認に、何の意味があるのだろう。多分、法律か何かで決まっていて、やらざるを得ないのだと思うが。
私のうっすらとした緊張は杞憂に終わったが、代わりに微妙なモヤモヤが残った。それでも、全然、通い続けるけど。