私は、今年の8月に20歳を迎えたのに一度もお酒を飲んだことがない。だから、今年のうちにお酒を飲んでみたい。

両親がお酒を飲まない家庭で育ったので、昔からお酒は身近な存在ではなかった。かといって、「お酒を飲むな」と禁じられていないし、「飲んでみなさい」と強要されてもいない。周りにはお酒を飲む友人もまあまあいるから、お酒を飲めない環境に置かれてはいない。

「飲まないなんて真面目だしえらい」「飲まないほうがいいよ」と言われたこともあるが、そういうわけじゃない。自分を律するために飲まないんじゃなくて、ただただお酒を恐れているだけなのだ。

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私は18歳で成人し、世の中の流れで一応「大人」になった。18歳になると、選挙権が与えられ、クレジットカードを作れるようになり、結婚も認められる。できることが増えるのは確かだが、「大人」になった気はしなかった。

それは、私が学生だからというのも関係しているかもしれない。社会人だったら「大人」だと実感していたかもしれない。でもそれ以上に、私はまだ子どもの延長線上に立っていて、子どもと大人の狭間にいる感覚が強かった。

「お酒とたばこは20歳から」 長年言われてきたフレーズが、「お酒をたしなめると大人」という1つのハードルを作り上げたのだ。このルールを批判し未成年飲酒を勧めたいのではない。「18歳で大人」、「20歳で大人」というルールに加えて、「お酒を飲めたら大人」という概念が存在しているように感じてしまうのだ。

そんな「大人認定試験」のようなものに縛られている自分がいる。

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私は、お酒を飲む行為は「挑戦」とは違うと思っている。人は何か物事に「挑戦」するとき、目標に向かって働きかけたり、自分からある場所に飛び込んだりする。だが、お酒を飲むときは違う。当たり前だけど、自分の身体にお酒を入れるから物理的に身体の中で変化が起きる。それがある意味怖いのだ。

目に見えないし、場合によっては意識がなくなる。お酒を飲んだら体調を崩すのではないか、中毒になってしまうのではないか。不安と心配に怖さが乗っかった感じの何とも言えない気持ちを抱えている。

もちろん、お酒を飲むことが良いとも悪いとも思っていないし、無理して飲む必要はないと思う。果たして私はお酒を楽しむことができるのか?それとも飲めないのだろうか?正直飲める人飲めない人どっちになってもいい。だが、試してみないことには何にもわからない。

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だからこそ、私はお酒を飲んでみたい。今年のうちにとは言わず、せめてもの20歳の間には一度飲んでみたい。お酒に「挑戦」するのではなく、ただ試してみたい。

試すことができたときには、私は「大人」になっているのだろうか。「お酒が飲めたら大人」というのは本当なのか。「お酒は怖いもの」という私がもつ印象は変わるのか。お酒を飲んでみたら、自分なりの答えが見つかるかもしれない。