年齢を重ねるごとに、一年があっという間に過ぎていく感覚が強くなってきている。毎年十月末日までハロウィン一色だったスーパーも街並みも、翌日から一気にクリスマス一色になる時期になると、その事をより強く感じる。

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私ももういい大人になったが、季節のイベントの中でもクリスマスから年の瀬にかけての空気感が一番好きだ。十二月が近づくにつれてみんなどこか浮足立ったような、普段よりも明るい雰囲気が人にも街にも灯るというのもあるけれど、子供時代にサンタクロースからプレゼントがもらえる日をうきうき心待ちにしていた時を思い出すというのが大きいかもしれない。私の元にサンタが来てくれていたのは小学校を卒業するまでの期間で、六年生のプレゼントに「もうお姉さんになったので、サンタさんが来るのは今年で最後です。」と短い手紙が添えられていて、突然の卒業宣告に動揺した事を覚えている。

大人になるにつれてプレゼントを貰える機会というのは少なくなっていったが、毎年どうしても欲しくなるのがスーパーに並ぶお菓子の詰まったブーツだ。私は炭酸飲料が苦手なのでシャンメリーを飲めない。あれほどクリスマスの雰囲気を楽しめる存在はないはずなのに、自分の舌の好みがこの時ばかりは恨めしく感じてしまう。

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お菓子のブーツをねだるのは小さな頃から変わらない。最初に買ってきてくれたのは、私の祖父だった。私がハマっていたキャラクターのプリントが付いたピンクのかわいいブーツで、普段は一つしか買ってもらえないお菓子がたくさん手元にある状況にドキドキした。その中に当時流行していた映画のキャラクターのマスコット人形が入っていたのだが、かわいらしいブーツとは相反してグレーの少しぶすっとした無表情の人形だけはどこか怒っているようで苦手だった。当時ぬいぐるみが大好きだったのに、その人形だけ後ろを向けて部屋に飾っていた。「おじいちゃん、あのお人形でも遊んで欲しいなぁ」とよく祖父に言われたが、おかおがこわいからヤダ、と断っていた。

そのクリスマスから五年ほど後に祖父は病気で不帰の客となり、あの時のお菓子のブーツが元気だった祖父からの最後のプレゼントになってしまった。それ以降、人形を見ると祖父を思い出して悲しくなってしまうので仕舞い込んだあとどこに置いたのかを忘れていたのだが、高校受験生になった年に探し物をしていた時に思いがけず再会を果たした。

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私が成長したからなのか、当時怖いと感じた表情に愛嬌があり、何より祖父の思い出と再会できた事が嬉しくて、お守り代わりに学習机に置いて私の勉強する様子を見守ってもらった。それ以降なにか叶えたい事ができると心の中で人形に「願いが叶いますように」とお願いするのが習慣になっている。

怖がったり崇めたり、なんて自分勝手な孫だろうかと私自身も思うのだが、大好きだった祖父からの最後のプレゼントなのでパワーがあると勝手に信じている。あの頃一緒に遊んだぬいぐるみたちはもうそばにいないけれど怖がって疎遠にしていた人形とは二十数年連れ添っていて、ひとり暮らしの家にも迷わず連れてきた。きっとこれから私がいくつ年を重ねても一緒にクリスマスを迎えてくれる大切な親友を、これからも大切にしたい。