お年寄りが多い地域で生まれ育った私。

地元のお年寄りたちはみんな優しくて、大好きだった。

ここでの生活と、私がおばあちゃん子だったこともあり、かなりお年寄りと接することに慣れていた。

このときの私には、人が年老いていくとどうなるかなんて頭になかった。

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社会人になって、1年が経とうとしていたときのこと。

急に、会社の介護事業のヘルプに行くことになった。

前職はIT系なのに、デイサービスを経営しているという変わった会社だった。

介護の経験は皆無なので、最初はとても苦労した。

仕事に慣れたころには、施設に来るお年寄りみんなから好かれ、充実した日々を送っていた。

働くようになってから、自分が介護される側になったときのことを考えるようになった。

私は、施設で色んなお年寄りを見てきた。

認知症でいきなりキレ始めるおじいさん。

「また始まった」と周りに呆れられていた。

「帰りたい」と言いながら、何度も椅子から立ち上がってしまうおばあさん。

先輩に教わった通り、相手の興味を引くような話題を出して、気を紛らわせて毎回乗り切っていた。

オムツに排泄してしまう数人のお年寄り。

それに気づいて笑う、他のお年寄りや一部の従業員。

「自分も同じ思いをするかもしれないのに、何で笑うんだろう」と、怒りがこみ上げた。

また、お尻をキレイに拭いて新しいオムツを履かせてあげているときに、悲しそうな顔で「ごめんね」と言われるたび胸が痛んだ。

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地元では、お年寄りのあんな姿を見たことがなかった。

冷静に対応しながらも「将来、私もこうなるのかな」と、内心はかなり動揺していた。

結局、1年半ほどでITの仕事へ戻ることになったけれど、ずっと頭から離れなかった。

それから月日は流れ、今度はプライベートで介護をすることがあった。

大好きな祖母が、末期ガンで寝たきりの状態になった。

悲しんでいる暇もなく、すぐに家族会議。

祖母の最期を実家で看取りたいという母の希望により、在宅介護が始まった。

ヘルパーさんは来てくれていたものの、母がワンオペに近い状態だった。

私は仕事終わりに帰省して、週末は母の代わりに祖母の介護をしていた。

デイサービスでの経験が役に立ったようで、母から「いつも助かるよ」と感謝された。

疲弊している母を休めるためにしていたものの、私にも疲れが出てきた。

言われないと何もしない父親に、苛立ちを覚えた。

薬の影響でせん妄が起きて、人格が変わったようになっている祖母。

母に怒鳴っているのを見たときは、とても信じられなかった。

目の前にいるのは、私が知っている祖母ではなかった。

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2ヵ月ほどして、祖母は亡くなった。

悲しい反面、もうあの地獄のような光景を見なくて済むのだと思うと、少しホッとしてしまった。

人には寿命があり、だんだん年を取っていく。

身体が思い通りに動かなくなったり、認知症などで自分ではない誰かになってしまったりすることもある。

デイサービス勤務と祖母の介護。

現実を目の当たりにしてしまったショックは大きかった。

介護される側になったら、私も若い人にたくさん迷惑を掛けて、その度に謝るのだろうか。

自分が誰なのかさえ分からなくなってしまうのだろうか。

どんなに食事に気をつけたり、定期的に運動したりしても無駄になってしまうかもしれない。

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そんな不安を最近、職場の上司に話したことがあった。

「今みたいに色々と努力していた方が、将来きっと良かったって思えるんじゃない?」

そう励まされ、私はもっと前向きになろうと思った。

ピンピンコロリが理想。

なるべく長生きして、たくさんのことに挑戦したい。

将来への不安を嘆くよりも、これからを明るく楽しく生きることを考えよう。