転職活動をしている。ここ1年ほどズルズルと。長引く理由は数多あれど、身も蓋もない回答をするなら選考に受からないからだ。

面接に大きな苦手意識がある。新卒の頃も、今も。人前で話すのは得意なはずなのに、自分を飾らないといけない気がして、思ってもないことを口にするようで、「上手くいった」と手応えを感じたことはない。

そしてもう一つ、新卒で勤めた会社を短期離職したという事実が、3年が経つ今も私を縛り付けている。私は私のことを、「御社に貢献できる人材」だと思えない。募集要項の条件すべてに合致する人なんていないのに、完璧主義な性格ゆえに、自分の至らない点にばかり目が向いてしまう。

転職活動はうまくいかない。商品を売る人間が、それをいいと思っていないから。もう1年くらい、転職したい、もっと輝ける場所があるはず、と思っている。

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半年ほど前、志望度が高い企業の選考を受けた。事業内容や目指すものへの共感、過去の経歴とのマッチ度合い、働く人の価値観どれもが他の求人からは群を抜いて輝いていた。ここしかない、と自分を追い込むほどに。

一次面接はゴールデンウィーク明けに行われた。実家でのんびりしようとしていた5日間を返上して、毎日を企業研究と面接対策に費やす。24時間のうち、寝ている時間以外はずっと面接のことを考えていた。それくらい、何もかもを投げ打ってでも、後悔を残したくなかった。お腹は空かなかった。初日に作り置きしたカレーと、冷凍庫の肉まん。食べるものを考える時間すら惜しくて、朝昼晩と交互に食べた。

自分の過去を振り返って、未来を想像して、相手との接点を言葉にする。泣きたくなるような過去にも、差し出すのに勇気がいる現在にも向き合って、その日を迎えた。

結果から言えば、面接には受からなかった。選考結果には有難いことに理由も添えられていて、意欲は非常に伝わったが、スキル面で求めるレベルに達していなかったと書かれていた。

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結果を見たのは母の目の前で、明るい声で「落ちた!」と言った。スキルが足りないなら仕方ない。転職はご縁だものね、と母も調子を合わせてくれて、夕飯の支度を一緒にして、5分後、自室に閉じこもって泣いた。なんだか全部が悔しかった。今現在、納得がいく仕事ができていないこと、それが起因して面接に苦手意識があること、努力が報われなかったこと、母の前で泣けないこと。1時間くらい、グズグズ言っていたように思う。「ごはん、温め直したから食べな」と声が聞こえて、鼻をかんだ大量のティッシュをゴミ箱に隠し、リビングに戻る。料理を口に運びながらも、何度か涙が零れた。

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結果は伴わなかったけれど、面接後に、これだけやって落ちたら仕方ないと思えるくらいの達成感があったことは驚きだった。5日間、他のことには目もくれず、面接のために生きるロボットのような暮らしをした。こんなことは受験を終えてからは久しぶりで、何かにリソースを集中投下することの気持ちよさを感じていた。自分が望む未来に向かってひたむきに努力できたことが嬉しかった。

仕事に追われる毎日で、自分の人生の舵を取っている感覚が薄くなっていたからこそ、こんなに「生きている」実感を得たのは久しぶりだった。

転職活動はうまくいかず、それどころか袋小路に立ち入ってしまって完全に迷子になっている。どこの方角に歩けばいいのかフラフラ道を探す毎日だけれど、道が決まったあとの馬力はある、とあの経験が教えてくれる。