私の両親は、ユーミンが好きだった。
クリスマスシーズンの我が家にはいつも、「恋人がサンタクロース」が流れていた。
まだ保育園児だったクリスマスの朝、ワクワクしながら枕元を見ると、案の定、サンタさんからのプレゼントが置かれていた。ずっと憧れていた光る魔法のステッキ。
でも。
私はもっとすごいものを見つけてしまった。
母のドレッサーに置かれた小さな包み。
「おかあさんにまでプレゼントがあるよ!」
興奮しながら、包みを母に渡す。中身は、母が趣味でしていたパズル。
「おかあさんにまでプレゼントなんて、サンタさんは優しいね!」
両親に足をバタバタさせながら言うと、悪戯っぽく笑って、母は言った。
「私、ダイヤのついた指輪が欲しかったなあ」
幼い私は「大人にプレゼントくれる優しいサンタさんにそんなこと言っちゃ駄目っ!」と、母を叱った記憶がある。
父は、少し眉を下げて私の頭を撫でていたっけ。
当時は分からなかったけれど、大人になって、母のあの言葉は、サンタクロースである父へのお茶目なおねだりだったのだと気がついた。
私は今年も、母の悪戯な笑顔と、父の少し困った顔を思い出しながら、あの曲を聴く。
いつか私も、サンタクロースにおねだりできる日を夢見ながら。