顔が可愛くないこと、これは私にとって凄く大きなことになってしまった。いつからか。
可愛かったら恋愛して彼氏もいて、楽しい人生なんだろうな。

鏡のなかの自分を可愛いと思っていた幼少期。
モデルのオーディションに応募したかった。
親に反対されてできなかったけど。

小学校に来たローカルテレビの取材でテレビに映った顔が、いつも鏡で見ている自分と違って、変な顔で悲しかった。私の好きな子は私の友達が好きで、私のことは「性格はいいけど顔が」って言ってたと人づてに聞いた。
そのひとは中学校で凄くパッチリした派手な顔の子と付き合っていて落ち込んだ。

◎          ◎

恋愛がしたくてしたくて、先生たちから進められていた女子高より一つレベルを落とした共学の高校を第一希望にして、無事合格した。入学してすぐ夢は壊された。高校生は残酷。可愛い子とそうでない子との対応の差があからさま。入学してすぐかわいい子を見に男子たちは他のクラスにいった。アイドルみたいな子がいると噂される子もいた。

「このクラス可愛いことそうじゃないこの差すごくない?」と話す男子の声を聞いた。マネージャーの見学に友達と二人で行ったら、先輩たちが一斉に友達の方を見て「可愛い~」と言った。友達の彼氏に平たい顔、後姿美人と言われた。ついでにその友達には中の下とも言われた。体育祭ではかわいい子の写真係だった。写真を頼んできた男の子は友達にだけありがとうと言った。

大学はバイトかサークルで彼氏ができるだろうと女子大に進学した。もちろん彼氏はできなかった。インカレは残酷だった。かわいい子だけ集められて遊びに行っていた。かわいい子は入って数カ月で彼氏ができた。自分はいなくてもいい、誰からも必要とされていない存在に感じた。

そのサークルは半年ほどでやめた。メイクを頑張っても理想の顔にはなれない。親には綺麗じゃないんだからそこばっかり気にしてないで他のとこで人より努力しなさいと言われた。

◎          ◎

しんどかった。何をしても報われない。おしゃれに興味がなかったら、恋愛に興味が無かったらどれだけ楽だったろう、違う土俵で幸せにいられる世界や可愛いにとらわれない世界線があるのも知っている。だけど小さい頃からおしゃれが好きでファッション雑誌が好きで恋愛漫画が好きで、いつか大きくなったらこうなれるんだと思ってワクワクしていた自分がまだ少しいる。

私の理想の人生を実現させている人もいる中で自分はできない人間だと認めざるをえない。まだ諦められていないけど、諦められたらどれほど楽だろうと思う。大学二年次に二重整形をした。歯列矯正もしている。でも可愛くはなれなかった。前よりはマシになったとは思う。綺麗になったね、と言ってもらえたこともある。

だけど過去との比較でなく今の私だけ見て可愛いと言われることはない。告白されたこともない、彼氏ももちろんまだいない、好きな人もできない。このあいだ、バイト先の男の子が可愛い女の子の接客を張り切ってやっていた。気が強い同期の女の子に対しても、顔は可愛いのにな、と言っていた。お客さんがマスクを外したところを見て可愛いだの可愛くないだの話している。ひどすぎて笑えない。

父親がテレビに出ている女性芸人さんを見て、容姿を馬鹿にしているのも酷く不愉快だ。

◎          ◎

ああ来世はどうかイケメンか美人にならせてください。
海外に行ったときは不思議と凄く楽だった。皆そもそも外見が違い過ぎて、自分の顔のことなんて考えなかった。自分の眼から見える景色が美しくて、もっと美しいものを沢山見ようと思った。


日本に帰ってきてからそのマインドはすぐ戻ってしまった。人からどう思われているのか、可愛くないんだろうなと思って生きるのはしんどい。出会いを求めてアプリもやった、紹介もやった、何一つ上手くいかなかった。可愛かったら上手くいくんだろうな。なにもかも顔のせいにしてはいけないと思うけど、思わざるを得ない経験がある。

一回目のデートで告られる子、食事の誘いがくる子、アプリで上手くいく子、私の周りにはいる。私の何がそんなにダメなの、何をしたら可愛くなれるの、どうすればこのモヤモヤがなくなるの。苦しくて悲しくてやりきれない。22歳、これからの人生に期待を持ちつつ失望もしつつ。