ずっと、いつかなんとかなるだろう、と思って生きてきた。
いつかそのうち恋人ができて、結婚して。子供を産んで、育てて、自分の親と同じように歳を重ねるのだろうと思っていた。普通に。
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普通に仲のいい両親の元で生まれ育ち、家族仲は良好、友達もいて、いじめられることもなく学校をサボることもなく、だからといって勉強がめちゃくちゃ好きなわけでも嫌いなわけでもなく。やらないといけないことをやらないといけない時期にちゃんとこなせたおかげで、普通の、むしろ恵まれているくらいの人生を歩んできた。
ただ、みんなが普通にやっている(ように見える)のに私にはうまくできないことがあった。それは恋愛、特にSEXだ。
好きな人と合意の上で始めたはずなのに、性器を出し入れされているということを自覚した瞬間、自分は入れ物でしかないんだなと感じてしまった。嫌悪感ともまた違う、諦めにも似た感情。それと同時に「ああ、そうか、この欲をぶつけられてもいいと思わせるために、この人は私に愛の言葉を囁いていたのか」と納得もできた。
とはいえこんなことを思う私はおかしい、初めてだったからかもしれないと言い聞かせて回数を重ねたが、これ早く終わんねえかなとしか思わなくなった。その態度が伝わったのだろうか、「君は僕の結婚相手ではないと思う」と振られた。まあせやろな。
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その別れから数年経つが、時間が経てば経つほど、自分の人生にSEXは特に必要ないなという気持ちは強まっている。性欲はないこともないが1人で処理できる程度だし、私にとってはSEXは心理的負担が凄まじいものなので、妊娠するかもと不安になりながらするほど価値のあることではないなと思う。あくまで私にとっては。
人にこういったことをやんわり伝えると「まだそういう相手に出会ってないだけ」「焦らなくてもいい人見つかるよ」と言われてしまう。焦ってるわけではないんだけどな。そうやって生きてる人もいるんだ〜って流してくれればいいんだけど。
“普通”に彼氏ができて結婚して子供産むと思ってたよ、私だって。波風立てず踏み込まれずに生きていくにはそれが一番安全だし、そうしたいと思ってた。でも恋愛とセットでSEXがあるのがしんどいんだ。恋愛を経てSEXを経ないと家族を作れないというのが私にはかなりハードルが高い。私にとっての愛は性欲とセットじゃないから。理解してくれとは言わないし、可哀想な奴と思ってくれて構わない。ただ、そういうやつも同じ世界に生きてんだな〜ってぼんやり思ってくれたらそれでいい。
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理解しあうのは難しいことだから、せめて人は人、自分は自分、の気持ちで、それぞれのやり方でみんな幸せでいてほしい。そのみんなの中に私もいられたらいいなと思う。
恋人がいる気配もない私を見て、口には出さないが両親は心配していると思う。申し訳ない気持ちもある。普通じゃなくてごめんね。多分孫とか見せてあげられなくてごめんね。その分幸せに生きられるように頑張るね。
今の私には親を心配させずに自分も幸せになる方法があるのかまだわからないけれど、いつかなんとかなる、なんとかするぞと思っている。