直近の仕事は3か月で辞めた。
自分でも恥ずかしい。
あの時感じた違和感を信じていたらこんなことにならなかったのに…。
一生残る職歴に傷をつけてしまったことを、今でも後悔し続けている。
◎ ◎
夫の転勤で名古屋に来て3か月、夫の精液に異常が見つかった。
このままでは妊娠ができない。
不妊治療には多額のお金が必要になること、産休育休を取りたかったこと、ワンチャン正社員になりたかったことから、フルタイムのパートを探していた。
そんな時目に留まったのが、あの会社だった。
「データ入力メインの事務!休みの都合がつきやすい!」
新卒で就いた接客業で客に殴られ鬱になった私にとって、とても魅力的な内容。
次の転勤まで3年はある。
この時は当然長く勤め続けるつもりで、私は求人に応募した。
「はるさんみたいな人が来てくれて良かった~。」
面接の結果は無事採用。
面接を担当した事務の女性は見た目は派手だけど良い人そうだった。
でもどうしてだろう。
言いようのない、ザワザワした気持ちが止まらない。
◎ ◎
事務の方が私とは違う、いい歳なのに派手なギャルだからだろうか。
(この人のことは面接官ギャルとする。)
ちょっと怖い職人さんが多い職場だからだろうか。
なぜかはわからない、でも今すぐにやっぱりやめます!と言いたくてたまらなかった。
嫌な予感を無視して、私はいい人になってしまった。
「電話営業ははるさんメインでやってもらうから」
「え。」
入社して初日、嫌な予感は的中した。
今までの会社のように雇用契約書はないと言われ、そんなものか?と思った直後だった。
「会社用の電話はないんですか?」
「うん、だからはるさんのスマホからお願い!」
面接の際にお客さんに電話をかけることがあるとは聞いていたけど、個人のスマホからとは聞いていなかった。
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そしてこの量。
顧客リストにはたくさんの電話番号が並んでいた。
「私かけ放題入っていないので電話代かかっちゃうんですけど。」
「私の使って良いよ!」
パートさんが彼女のスマホを差し出してくる。
そうじゃなくて…。
もやもやとしたまま一日目を終えた。
「保険証っていついただけますか?」
「社長が持ってるんだよね。」
入社して1か月以上。
給料明細ももらえていなかったし、休みの都合も面接官ギャルの気分次第。
◎ ◎
それ以上に保険証を受け取っていないことが気になっていた。
それまで使っていた保険証は返却してしまったし、このままじゃ何かあっても病院に行けない。
安心したい一心で聞いたのに、不安は膨らむ一方だった。
そしてその数日後。
「保険証を渡すの遅れてごめんね。」
面接官ギャルから封筒を手渡される。
これでやっと不妊治療ができる。
そう思ったのに。
渡されたのは鉄板焼きの招待券だった。
朝起きた瞬間から涙が止まらず欠勤した。
求人の内容そのままなのは時給だけ。
友達に相談しても「変じゃない?」と言われるばかり。
ストレスの原因は仕事だけではなかったけど、仕事が大部分を占めていたのは明らかだった。
◎ ◎
社会人失格。
クズ。
自分で自分を責めた。
面接官ギャルから電話とLINEがくる。
「接客が苦手なら工場とかで働いたら?」
「だからデータ入力の仕事に応募したんですけどね。」
何を言ったかは覚えていないが泣きながら訴える。
「だったらもうやめてください。」
宣言されたクビ。
もうどうにでもなればいい。
◎ ◎
就活や転職を考えている人がいたら、お伝えしたい。
面接や入社手続きの際におかしいと感じたら、少し時間をもらった方がいい。
それで内定を蹴ったとしても、それまで。
まともな会社ならネットに個人情報をさらされたり、家に放火されたりすることはない。
もう二度と会うことは無い。
現在私は娘を授かり穏やかに過ごしているが、短期離職の影響や転勤、子育てを考えると再就職は難航するだろう。
あの時自分の直感を信じていたら…。