私は迷うことがほとんどない。

そして、迷わずに決めたことで後悔したことは、全くない。

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大学生の頃、ひょんなことから知り合った男の人がいる。

最初はなんとも思っていなかったのだが、そろそろ帰ろうかという時間になった頃ふとその方の横顔を見た時に、「あ、この人をこのまま家に帰したら、私はきっと後悔をするな」と直感的に感じた。

なぜその時にそう感じたのかと考えても、「顔がタイプであることに気がついたから」くらいの理由しか思いつかないが、そうだとしたらなぜそれまで気づいていなかったのかが不思議である。

しかし、私は慌てて自分の少ない頭で一生懸命つまらない話題をなんとか繋いで繋いで、どうにかしてその人との別れの時間を少しでも遅らせようと努力した。

その時の男の人というが、今の夫である。

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私は昔からそういう「ここ一番」に強い。

何も考えていないわりに、選択肢をミスすることがほとんどない。

正確に言えば、ミスをしていても気づかないし後悔をしないのでどうでも良いだけなのかもしれないが、そんなこたぁやはりどうでも良い。

今のところ、その人を夫にしたことを、やっぱり私は何も後悔していないのだ。

結婚する際に周りの有識者もどきからは散々「結婚しない方がいい」と言われたものだが、その人たちのアドバイスも今のところ一つも役に立っていない。

さらに「どうせすぐ離婚することになる」と様々な人から予言されたが、その予言してきた人たちの結婚生活期間(すでに終了を迎えている)よりも、私たちの結婚生活の方が長くが続いてる。

あの時の直感は、私にとって確実に必要なものだった。

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だが、確かに、直感だけを信じて勢いで突き進みすぎたなと今になって思うことはある。多々ある。

まさかその男性が私と付き合ってすぐに無職になるとか、まあすぐに転職するだろうと思ったら未だに無職であるとか、そんな無職に別居を切り出されるとか、考えてもみなかった。

しかし、よく考えれば予想外のことなんていくらでもあった。

私は結婚する気なんかサラサラなくて、手相を見てもらえれば毎回「あなた結婚線がツルツルね、結婚願望ないでしょう」と言われる人間だ。

だから、夫とも結婚せずに長い長い同棲生活をしながら楽しく2人で生きて行くのだろう、くらいに思っていた。

そうしたらいつのまにか結婚しているし(なんなら私から夫にプロポーズしたし)、一緒に暮らすのをやめたいと夫から言われるし。

なんなんだこの人生は。

私の思い描いていたものとはまるで違う。

そんなことを考えながら夫を見ると、3年前から買うかどうか悩んでいる家電を未だに買うかどうか悩んでいる。

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この人は直感が一切ないタイプだ。

悩んで悩んで、決める人だ。

そういえば、旦那は初めて私と話した時、「ひっでぇ女だな」と思ったらしい。

ベロベロに酔っ払っていたので詳しくは覚えていないが、おそらく私が何か粗相をしたのだろう。

もし夫があの時に直感を信じていたら、きっと私たちは2度目のデートをしなかっただろう。

直感がないタイプの夫に感謝である。

人生は何があるかわからないから面白い。