食に変な執着が生まれてから、朝ごはんはその時々で「安心」あるいは「最善」と自分が判断したものに固定されるようになった。
今は野菜(たまに果物)、ベビーチーズ、焼かない食パンにマーガリンの3点セットが基本。そうそう、食後のお茶も忘れずに。

これで足りないときは30分後くらいにスープやプロテインを飲む。何かしらをおかわりすればいいのだけど、うっかり満腹になりすぎて1日中それを引きずりそうなのが怖いのだ。難儀なものよのう……。
昔はチーズ蒸しパンとかバタースティックとかシフォンケーキ(パンコーナーにある、中心部がくぼんだあれ)とか食べていたのにな。今でも食べたい気持ちはやまやまであることはお伝えしておきたい。

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しかし実家に帰ると少し風向きが変わることがある。
基本的にはベビーチーズがとろけるチーズになり、それに付随してトースターが召喚されるという変化なのだけど、父の休日に運良く被るとカフェオレを飲める確率があるのだ。
両親ともにコーヒー党で、特に父の方がこだわり強めな印象。それと関係あるかはわからないが、朝からていねいにペーパードリップで淹れ、母にも飲むかどうかコーヒーポット片手に尋ねているのをちょくちょく目にしてきた。意外と断られていることもあって軽く気の毒に思ったりもしていた(母は朝胃が弱めだから……)。

振る舞いたい気持ちがにじみ出ていながら玉砕している姿を見ているとなおさら、「のあ、カフェオレ飲む?」と聞いてきたらイエスと言いたくなるではないか。私の胃も貧弱だから普段は牛乳単体ですら起床後数時間経たないと飲まないけど、ダブルで断られたら悲しすぎるではないか。
……こう言うと完全にお情けみたいになっているが、実は素直に嬉しい。

コーヒーと言えば父と母の飲み物というイメージが小さい頃からずっとあった。

あの香りは好きなのでいつか飲める日を待ちわびていたのだが、残念ながら今でもブラックが飲めない。なんならちょっと貧血になることもあるくらいで、体質的にNG疑惑すら持ち上がっている。紅茶はいくら飲んでも平気なのにな。
そんな感じなので、コーヒーのやりとりは父→母あるいはその逆という2者間が常だった。その代わり母が紅茶を淹れてくれることもあったので全く不満はないのだけど、とはいえどこか疎外感というか、羨ましさみたいなものはあった。

そのため、牛乳は入るとはいえコーヒーのお伺いが私に回ってくるのは、「大人」の仲間入りができたようで嬉しいのだ。大袈裟に言うと、両親のいるステージに私も混ぜてもらえた! みたいな喜びである。

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イエスと言うと出てくるのは、リラックマのカフェオレボウルになみなみ注がれたカフェオレ。私向きにしてくれたようで、やや薄めの色味。薄めようとした結果たっぷりになったのだろうけど、これだけでお腹たぷたぷになりそうな量に若干ひるむ私。

いろんな意味で、朝からいけるか……?

しかしこれだけ多いとゆっくり飲もうという気になるので逆にありがたいのかもしれない。
というのも、私はぬるくなるのが嫌なので普段ホットドリンクは熱々のうちに飲み切らないと気が済まない。そのため自分で淹れる際は間髪入れずに飲み続けられる量しか作らないのだけど、カフェオレボウルなみなみの量なら”ぬるい”を通り越していい感じに冷めるところまでもっていけそうなので(それはそれでどうなの)、余裕をもって向き合えるのだ。

ということで朝食のチーズトーストを食べながら熱々のカフェオレを飲み、その後作業のお供に残りを飲み……という延長戦に持ち越したのだけど、いやあ、これもまたいいもんですな。

コーヒーであること以外にも、”カフェオレボウル”というところも余裕がある感じがするではないか。どこかフランスの風が吹いているようで。知らんけど。
カフェオレボウルといえばフランス、フランスの朝食といえばカフェオレとクロワッサン。なので、いつかチーズトーストではなくクロワッサンと一緒に楽しんでみたい。クロワッサンを買ってきたら済む話なのだけど、食パンに固定化されている私には難易度が高いのだ。あとバターで胃もたれしそうだし。

しかし帰省というイベント期間中のほうが勢いでなんとかなるはず。今度帰るときは事前に相談してみようかしら……。