地方に生まれて、何かに憧れ、夢や希望を持って都市部に出たものの夢破れて地元に戻ってしまう人はたくさんいる。
都市部は「愛」「温もり」だけじゃとてもやっていけない、吹雪のように冷たい風が吹く場所であるように遠巻きからは見える。中には氷と化してしまう人もいるのだろう。
その固まった氷を溶かしたくて、それぞれが知らず知らずのうちに熱湯を探して街を、森を、海を彷徨っている。
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小さい頃から都市に出たいという気持ちばかりはあったものの、あまりにも漠然としていて「◯◯をしたい」という目的や未来が見えていなかった。
そして臆病な気質が故に、慣れ親しんだ地方の温かみのある人や場所に甘え居続け、夢ばかりを見て眠り続けているうちになんやかんやと歳ばかりをとってしまった。
ハァ〜キャリアもねぇ、車もねぇ、厳しい社会じゃやってけねぇ!という状態だ。
自分の家族・親戚の中を見渡してみると、都市あるいは都市周辺に挑戦しに行って住み続けられている人間は0に近い。
父方にしても母方にしても、DNAの勝率が低い状態を小さい頃から目の当たりにしてきた。こんなことを言っては申し訳ないけれど、これは事実として。
都市部ではひとりで戦わなければならないので弱者と化し、地方では皆で固まってチームとなるので強者となるのか等考える。
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このDNAを背中に背負ったまま、私もこの命があるうちに都会で息をしてみたい。病を持っていて脆い身体だけれど、のめり込めばそんなことは忘れ去って強くなるのかもしれない。
一度でも息をしてから死ぬのなら、悔いは残らない。
そのためには戦略をよく練った上で、負ける確率が少ない状態にしてから挑戦したい。
ああ、臆病者。
そうしているうちにまたしても時計の針は無情に進んでいく。
自然の近くだと息が吸えてしまうから、水中に顔を埋めるような感覚を味わってみたいのかもしれない。
はりつめた気持ちで、真剣に何かを作り出してそれを世に放ち、何かや誰かの役に立ったと実感を持てる作業をしたらどんなに心地いいのだろう。
例え作り出したものが多くの人々から「無駄」「必要がない」と言われようとも、笑われようとも、誰か1人の胸に響けばきっと込めた魂は報われる。
これが創作意欲というものなのだろうか。意欲ばかりはあるのに実績がないのでは、誰も見向きもしない。恥ずかしや。
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冬の寒さが身に染みる午前5時。暖房もつけずにそんなことばかり考える。
布団から出た頭部とスマホを打つ手元で、ひんやりとした空気を感じる。
この環境は人から見たらきっと幸せなはずなのにどこか隙間風が吹くようだ。
何もかもを守り抜いた上で氷の世界に挑むというのは果たして傲慢、無謀なのだろうか。
私の生息地はいったいどこ?
身捨つるほどの祖国はありや?って感じ。
やる気のアクセルを全開にしてみたいと思えるところへ行きたい。
こうして愚痴のような戯言をこぼせるのも、全ては幸せと愛情をたくさん受け取ったからこそでありがたきことなのに、もどかしくて仕方がない。