忘れられない写真は、誰にでも一枚はあるものだと私は思う。写真とは、どれだけ時が経っても、ふとした時に見返せば、撮った当時に一瞬にして時を戻してくれるような、まるでタイムマシンのような存在に感じる。だからこそ、大人になって仕事がつらいとき、なんだかうまくいかない日々が続くとき、もう会えないあの人を思う時。どんな時でも、私はスマホのアルバムをグングンと上まで遡って、あの日々を取り戻そうと写真を見返す時がある。

その中に、忘れられない写真がある。

それは、高校一年の頃の写真だ。命を懸けて片思いをしていた彼と撮れた、奇跡の一枚だ。場所は焼肉屋の駐車場。体育祭か何かのクラスの打ち上げで、帰り際に撮ったあの日を、私は一度も忘れることはなかった。

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私は当時、彼にあの手この手でアタックした。その頃は今では想像もつかないほどの行動力を備えており、それが自分の長所だと自負するあまり、今思うと迷惑なほど彼にまとわりついて過ごしていた。

高校生になって一目ぼれした彼は、私がこれまでこのサイトに投稿したエッセイに何度も登場してきた一色君である。

夏に花火に誘い、られ、秋に映画に誘い、られ。何もかも、「今はそんなときじゃない」と断られたとしても、私は彼がとても好きだった。

今思うと、本当に彼の恋人になりたかったのかは分からない。だけど、なぜだか放っておけないところや、どれだけ人がいても今近くに彼がいることを察知できる魔法のセンサーは、いったい何だったのだろうか。

その写真を撮るとき、私はもうこれが最初で最後の写真になるだろうと緊張し、今思うと化石みたいな小さなアイフォン5を両手で握りしめ、彼がひとりになるタイミングを待っていた。

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「みんなで写真撮ろうぜ!」

仲のいいクラスだったから、みんなで打ち上げの後、お店の外で写真を撮った。そのあとに、不意に訪れる仲いい子同士で写真を撮る雰囲気。私は友達と隅のほうで、そろそろ帰ろうかもじもじしていた。

そんなとき、クラスのカップルがツーショットを撮っているのが目に入った。

いいな、あんな公の場でみんなに祝福されるカップル羨ましいな。私は羨望のまなざしで彼らを見ていた。

一色君はその傍らにいた。冷やかすでもなく、ただ笑って「お前らいいな」という優しい目じりの下がった横顔が今でも脳裏に焼き付いている。

「ももりんも一色君と撮りなよ。これが最後かもしれないし」。

来年同じクラスになれる保証はない、この最初で最後の機会を、私も逃したく無いと思った。

「そうだよね、行ってくるよ」。

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友達の後押しのおかげで、私は一色君の元に駆け寄って、一枚写真を一緒にとってほしいと伝えることができた。けれど、その時私のスマホは充電があと1%ということに気が付いた。どうしよう、ともじもじしていると、ぐっと上から一色君が自分のスマホを掲げた。

「撮るよ、はいチーズ」、カシャリ。

そのぶっきらぼうな言い方も、一瞬にして「また送る」とだけつぶやいてどっかに消えたのも彼らしかった。私はしばらく、その場で放心していた。

帰ってから送られてきた一色君からの写真の中の私たちの間には、人が1人ほどは入れるような謎の距離感があった。

私は少しうつむきがちに、口元を緩ませてピースをしていた。一色君はこちらに身を寄せて、相変わらずカッコよくはにかみながらピースをしていた。