私にとってスマホは、「魔法の機械」だと思っている。分からないことがあっても検索機能で調べれば直ぐに解決するし、面白い情報や映像も手軽に見ることができて、ちょっとだけと思っても気づけば何時間もスマホを使っていたことがある。こんなにスマホを手放せず、夢中になっていた私であるが、高校3年生の冬、あることをきっかけにスマホと距離を置いた生活をすることを決めた。

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 そのきっかけとは、「SNS疲れ」である。高校1年生の頃、「趣味における交流の場を広げたい」という目的で、趣味用のSNSのアカウントを作った。最初は、完全な趣味で投稿をしていた。そんな個人的な趣味の投稿でも、「いいね」がついた。こんな体験は初めてだったため、自分のことが認められたような気がして、とても嬉しく感じた。そこから自分のアカウントを通して、「いいね」を意識した投稿をし続けた。SNSでは、投稿1つで簡単に承認を得ることが出来る。この手軽さに魅力され、学校の課題や睡眠を後回しにして、SNSに夢中になっていたことを覚えている。そして、SNSを通してできた友人や投稿に対する「いいね」のおかげで、充実した毎日を送ることができていた。

高校3年生の冬頃、いつものようにSNSで投稿しようとした時、自分の投稿への反応を気にしすぎるあまり、SNSを楽しめなくなっていることに気づいた。最初は気のせいだろうと自分を否定した。しかし、本来始めた目的とは異なった使い方によって、「いいね」の数やフォロワーの数に囚われて、「趣味」ではなく、「義務」でSNSを利用していることに気づいた。自分を偽ってまでSNSを続ける必要はないのではないか。このままでは、SNSによって自分の心が疲れてしまう。そう思った私は一度SNSを辞めようと決意した。

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しかし、今まで自分の生活の一部化していたSNSをめることは簡単ではなかった。スマホを見ていたら、無意識の内にSNSのアプリを開いてしまう。これでは良くないと思い、私は、思い切ってSNSを使うことだけでなく、スマホからも距離をおいた。最初はなかなか慣れず、スマホが手元にないことが不思議でソワソワしてしまうこともあった。しかし、家族と出かけたり、友人達とスポーツをしたりとなるべくスマホを使わない娯楽を楽しむようになったことで、スマホにも意識が向かなくなっていった。

SNS断ちをきっかけにスマホからも離れた生活をして気づいたことがある。それは、スマホがなくても案外普通に生きていけることだ。もちろん必要最低限のやりとりは行わなければならない。しかし、常にスマホとにらめっこしている時間よりも外の世界でさまざまな体験をした方が有意義だということに気づいた。

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また、SNSを通して見ていた世界は、偏っていて閉鎖的な空間だったのかもしれないとSNSに対する考え方が変わった。スマホを使わずSNSからも離れたことで、自分自身を見つめ直す機会をつくることが出来た。そして、現実の世界での友達や家族との交流を深めたことで、SNSでの承認欲求が徐々になくなっていった。そのため、今ではスマホを使っていても以前と比べてSNSに執着していない。アカウントはもっているが投稿や交流などはせず、情報収集、いわゆる「見る専」でひっそりと利用している。

常に新しい情報が更新されているSNSの世界はとても刺激的で、ついつい夢中になってしまうかもしれない。しかし、SNSの沼は1度のめり込むとなかなか抜けだすことが難しい。今回の体験から、SNS依存の怖さと現実の世界とつながりをもつことの大切さを学ぶことができた。SNSがもたらす欲求には振り回されず、適度な距離間を保ちながら、これからもSNSと上手く付き合っていきたい。