私が初めてスマホを手にしたのは高校一年生のときだった。

そのときはもう本当に手にスマホがくっついんたんじゃないかってくらい、スマホをずっと使っていた。だってスマホを使えば、ゲームアプリで面白くて楽しいことができるし、SNSで人と繋がれるから嬉しい気持ちにもなれる。写真だって動画だってスマホで撮るから、どんな思い出のそばにもスマホはいたんじゃないかな。

でもじゃあどうだろう、スマホがそばにないとき、私たちがスマホから離れているときっていつだろう。そんなことを考えてみた。

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友達と喋っているとき、読書をしているとき、映画を観ているとき、ぱっと思いつくのはこれくらいだろうか。お風呂に入る時も防水ケースに入れて持って入るし、料理をするときもレシピを見るから使っている。でもよく考えれば友達と喋っている最中にラインが来たら多くのひとがちらっと確認するし、スマホ片手に喋るひとも多い。

読書をした後も、ブックレビューを見たり書いたりするのはSNSだからスマホを開く。映画も同様、レビューを確認したり、出ている俳優さんについて調べたりする。ああ、全部スマホが必要なんだ。

こうなってくると、スマホを家に置いてきてしまった一日を思い出したほうが良いかもしれない。私はそうなってくると思い出すある一日がある。それはスマホなし(になってしまった)1人旅である。あの日は珍しく、音楽を聴くためのイヤホンをしないで外に出たから、スマホを忘れたのに気づいたのが遅かった。

「あーやらかしたー」と思いつつも、いっそのことスマホなしでぶらぶらしてみるのもいいじゃないかと家にスマホを取りに帰らなかった。

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とりあえずまずバスの中が暇だった。音楽をずっと聴いている私からすると軽くストレスになりそうだったが、バスの車内アナウンスってこんな感じだったっけとなったり、外の景色をぼーっと眺めたりしてると意外と時間を潰せたりした。いつもじゃ見ることもないバス内の広告すら読んでいた。これは活字病。

駅に着く前にスマホで発車時刻を見ていたのが、スマホがないとできないので少しそわそわしたけど、地下鉄は少し待てば来るのでそんな心配はいらなかった。地下鉄内はもうほぼ全員がスマホをいじっていて、私はないのにいじっているような感覚に襲われた。

お目当ての駅に着いて地上に出るとまあ困った。地図アプリを使えないのだから。その時は行きたいカフェがあって、そこを目指していた。私は勇気を出して通行人に声をかけてみた。

よくよく考えれば、この時代に通行人に「このカフェどこですか?」と声をかけるなんて、もはやテレビの番組でしか見ない光景だろう。と声をかけた後に気づいた。そしたらたまたま偶然その人もそのカフェに行くそうで、こんな偶然あるのかよ!と心のなかでガッツポーズをしながら、その人に案内してもらった。

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店に着いてからもその人に良かったら一緒にどうですかと言われて、まさかの一緒にティータイムを過ごすことになった。その人は私よりも少し年上のお姉さんで、優しくてすごく助かった。

実は今日一日スマホなしで過ごしていてと、道を聞いた理由を話すと「えーそれは大変だったね」とスマホなしじゃ生きられないトークになった。最後にお姉さんから、連絡先交換しようと言われて「是非!」と私が言ったあとに二人で笑った。そうだったスマホないんだったねえと言いながら紙ナプキンにペンでIDを書いて渡してくれた。

お姉さんと別れてから家に着くまでの帰路は、なんだかほっこりした気分で帰ることができた。もし私がいつも通りにスマホで検索してカフェに着いていたら、お姉さんとも仲良くなることはなかったかもしれない。スマホを手放したら、新しい出会いがあった。そういう一日もとっても素敵じゃない?