宣言ねえ……、2024年のせんげん、ねぇ……

真っ白なパソコン画面の真ん中に、居場所なさげに「2024私の宣言」とだけ書かれたワード文書を前にして、フリーズすること30分。私の心中に、この間結婚式に一緒に参列した、高校の友人の言葉が蘇ってきた。

「この数年さあ、アラサーを散々ネタにしてきたから、最早1年後の30歳は怖くないのよ。本当に怖いのはさァ!10年後には自分たちがアラフォーになってることなんだよね!信じられる?うちら10年後40歳だよおおお?」

友人の晴れの日に話す話でもないだろと苦笑しつつ、彼女の心からの叫びは、私の心に何かをもたらした。確かに、怖いのは変化の予測のつく近い未来の1年後より、自分がどうなっているか想像もつかない遠い未来の10年後だ。

そう、私たちは、生きていればいつかきっと40歳にも50歳にも60歳にもなる。でも、その前の今年2024年、私たちは、私は、30歳になる。

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1年の抱負を真剣に考えなくなったのは、いつからだろう。小学生や中学生の頃は、新年の抱負を書き初めか何かに書いていた気がするし、高校や大学の頃も新年を迎えることに今よりワクワクしていた。大学を卒業し社会人になるころは、抱負を通りこして気負ってすらいた。

きっと文房具売り場で新しい紙の希望の匂いを比べながら手帳を買っていたとき、そして新品の手帳を家に持ち帰り最初の数ページにいつもより丁寧に綺麗な字を心がけて、目標を書き込むあのとき。

そこから、段々と利便性に気が付き、スマホでスワイプして予定をささっと埋めるようになったあのあたりから、私の新年の抱負はワクワクと本気を失っていったような気がする。この数年かがみよかがみで新年の抱負みたいなものを書いているのだが、三日坊主とまではいかないが、十日ミディアムボブくらいな感じで、抱負も初心も忘れる。

熱しやすく忘れっぽく飽きっぽい。コツコツと何かを努力することが苦手なのは、私のコンプレックスであり、最大の欠点だ。そんな自分の欠点を毎年嫌ほど突き付けられるのだから、新年の抱負を立てるのも嫌になるというものだ。

だから、30歳を迎えるメモリアルイヤーの2024年も「私の宣言」筆が進まない。

ふと、パソコンから目を上げて部屋を見渡せば、そんなコンプレックスが具現化した残骸が部屋に散らばる。

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あまり目につかないよう机の奥に押し込んであるあのテキストグッズは、ファイナンシャルブランナー3級を取得しようと某大手通信教材会社で大学時代に購入したものだし(2回図書館で開いてそこから放置)、今年こそTOEICの高得点を取得しようと意気込んで入ったオンライン英会話塾は、最初の1ヶ月に24回受講して燃え尽きた。

彼氏との同棲を機に仕事頑張ろうと簿記の勉強を始めるも、銀行員の私を差し置いてシステムエンジニアの彼氏が先に合格し、これで落ちては恥ずかしいと受けることなく敵前逃亡。本棚には「〇〇すればあなたも××になれる」といった自己啓発本が並ぶ。

他にも押し入れを開ければ、ダイエットしようとしたが1回しか行かなかったテニス教室のラケット(キャンペーンで入学したので9か月やめられなかった)、ダイエットグッズが転がっている。もう、恥を「かいている」だけな気もするが、ついでに付け加えると絵も「描こう」とタブレットも買ったことがある(ご想像の通りの結果です)。

結局私が1年の最初に立てるような抱負などは、やる気ではなく、急に降って湧くような気まぐれなのだ。

だから私はあえてここで宣言したい。私は30歳になる今年、「一念発起」をやめたいと思う。今までの数々の気まぐれの失敗を突き詰めると、だらだらとスマホを見るだけで2日間の休日を過ごしたあと、とんでもなく損してもったいない気になり(大抵2日目の16時あたりだ)、部屋を猛烈に掃除し始め、猛然と英語の勉強を何かを取り返すかのように取り組むのだ。

久しぶりに会った友人やタップの先にある記事に感化され、英語の勉強をしにワーキングホリデーに行きたいと宣言したことも、急なやる気であった。

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今年で30歳になる私よ、いい加減学べ。

人間そんなにすぐには変われない。そんな急にやる気を出しても、コツコツ努力してきた人には敵わず、そしていつも理想の自分に追いつかない自分に嫌気がさし、飽きて、また挫折するのだろう。でも、次夢見る頃には、またその全てを忘れて、「3か月で自分を変える方法」や「△月で〇〇キロやせる」といった一念発起系の記事に感化され、夢を見れるあなたは、おめでたくまである。

コツコツできない私よ、でもそれでも夢みてしまう私よ。一念発起をやめよう。否、「この『一年』だけ発起」するのをやめよう。「すぐ人生激変できる」といった甘い考えを捨てよう。この29年間の人生であと1年のうちに、逆転ホームランを打てる打席が回ってくるほどの運も、そこでホームランを打つ実力もガッツもない凡人の私だから。

「一念発起」の一瞬のやる気だけで、「一年だけ発起」するのでなく。本当に勝ちたいなら舞台を40歳にしよう、50歳にしよう、その先にしよう。

その時に、どこで勝っていたいのか、どこで負けたくないのか、そのためにコツコツでもやらなければいけない努力はなんなのか。かがみよかがみだけはなんとか80本も続けてきたあなたになら、分かっているはずだから。大丈夫、しぶとさだけはあるのだから。

2024私の宣言、「一念発起」と「一年発起」をやめます。