LINEアプリというものは、親しい友人とスタンプを送り合ったり、用がなくてもくだらないやり取りをする気軽なツールだった。

ところがいつの間にか、職場の人間と繋がったり、好きなブランドの公式アカウントからお得な情報が送られてきたりするのが当たり前になっている。

家でプライベートの時間を過ごしているときに、職場の人間の名前がポンッと通知欄に現れて息苦しさを感じるのはそういうわけだ。 

新商品やクーポンの情報がくるたびに、私というかたまりが情報の渦に巻き込まれていくのを感じるのはそういうわけだ。

緑のアイコンが恨めしい。

ついに私はスマホのトップ画面に鎮座するLINEのアイコンを長押しし、削除することに成功した。

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やってやった。憎きアイコンめ。

少しだけすっきりしたトップ画面を眺めて、心が解放されるのを感じた。
おかしなことに、これだけで自由になったような心地になるものだ。 

それをきっかけに1日デジタルデトックスとやらをしてみる。スマホやPCなど電子機器に触らないで過ごすこと。1日といわず、数時間でもストレス軽減の効果があるという。

視界に入ると手に取ってしまうので、布団にスマホとPCを埋めた。いつも働いているスマホとPCに、「お休み、今日はゆっくり休むんだよ」と声をかけるつもりで。

すぐに退屈になるかと思ったが、案外なければないで過ごせるものだ。掃除をしたり、本を読んだり、料理をしたり、映画を観たり、風呂にゆっくり浸かったりして過ごした。

特に、時間がなくて読めていなかった本や、いつか観よう観ようと思いそのままにしていたライブのDVDをじっくり楽しめたのがよかった。

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スマホがないだけで、1日ってこんなにたくさんのことができるんだ。

人と繋がらずに1日自分だけの時間を過ごしたら、私が本当にやりたいことや大切にしたいことがわかった気がする。

そして、誰とも繋がらない孤独をちょっぴり感じたのも事実。

デジタルデトックスをした次の日、スマホをみると大量の通知、大半はどっちでもいいようなメルマガだ。その中に母からのメールを確認した。

「年末は帰ってこれそうかな?身体に気をつけて」

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スマホから離れてわかったこと、私は完全に周りとの繋がりをやめたいわけではない、本当に大事にしたい繋がりだけを自分で選びたいんだ。

スマホを少し操作するだけであらゆる情報が受動的に入ってくる世の中で、ただ受け止めるのではなく、自分で選びたいんだ。

企業の公式アカウントから届く割引の連絡に踊らされて、そこまで欲しくもない服を買うのではなく、自分で本当に気に入った服を選びたい。

職場の付き合いで連絡があった飲み会になんとなく顔を出すのではなく、話したいときに話したい相手に自分で連絡を取りたい。

何をしたいのか、何を買いたいのか、誰と話したいのか。
スマホに私らしさを吸い取られない程度に、うまくやっていきたい。