歌や詩でよく見るような言葉を使うと、やはり人生は長い道を歩くことであると思った。下り坂や上り坂、時には辛い山の中を黙々と歩くことになるだろう。雨も降っていて、寒さに震えてただ歩くこともあるだろう。しかし一人ではないのだ。

生まれたときには家族に囲まれ、支えられる。自我が芽生え幼いなりに歩く。家族以外に友人という心の支えもできる。友人と共に学び、楽しい話をして安らぎを得られるだろう。

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ただ家族や友人は近しくてもやはり他人で、共に歩き同じ時間を共有できても、自分の、一人の時間はどこかにある。他人を除けば自分がいる。自分一人でたくさんの選択をして、自分の道を歩く。

そう認識しだしても、私はそれが少し怖い。重く考えすぎなのだろう。ある人は甘い、未熟だと言うかもしれない。考えすぎだよと自分に優しくなってみる。

もう少しで、勇気や、覚悟が備わってくるのだろうか、良いように変わるのだろうか。

学生から社会人へ、見える視点が、価値観が変わりだしている。当たり前のことにまた、気づきだしてもいる。

こうなれたのは、私が一人の男の人を好きで、振られたからだ。

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彼は私が社会人なりたての時の上司だった。私にとって彼は、手を伸ばしても届かない綺麗な鏡だ。好きは好きでも、色んな感情が混ざって生まれた、『好き』だった。

今振り返れば可笑しいほどに恋に落ちていた。

恋は盲目という。冷静になれば良かったものの、落ちてしまったなら追いかけるのみ！と、当時の私はそう思っていた。

仕事を覚えながら、隙を見ては必死になって彼にアプローチしていた。

これほど人を好きになることはあるかと、本当に必死だった。しかし苦しいことに時間が合わないことに気づいた。致命的だ。

彼は忙しかった。私は彼と一緒にいる時間が欲しいと思った。彼はやんわりと断っていた。 苦しかった。

どこか頭の隅で、一度区切りをつけるべきだと思った。

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ある日、私は彼に好きと伝えた。好きと伝える前には彼の心のドアを必死にノックしている気分だった。

「自分の道を行け!」

そう言われた。それが全てだった。

告白した後の季節にまた距離が近づいたと思ったが、結局彼が分からないまま、仕事の繁忙期に体調を崩して私は職場を離れた。

心身共に体調が落ち、感情が制御出来なくなっていた。

振られている私だが、そもそも私は彼を人として尊敬していた。

尊敬しているから、自分の意見を分かって欲しいからといって、私は彼に思考と感情を混ぜた良くない言葉、または私のストレスを彼にぶつけた。

自分も彼も辛いことを私はしてしまった。そして感情的でいたくないと必死に保っていた私の鏡に罅が入った。

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因果応報という言葉があるように、人にしたことは自分に返ってくる。

私にとって彼は理想で、別々の鏡だ。

私は現実が苦しくて、理想を成し遂げてくれるだろうと彼に縋った。しかしそれは、悪いことであったので、反射で自分に返ってきた。

痛くて、苦しくて、私の鏡が壊れた。

私は現実を見るべきだった。自分はどうなりたいのかと、自分という鏡を覗かなかった。反射で壊れた私は、自分を見る力を失っていた。

それを自覚し、私は彼と出会った縁を今は切っている。

縁とは、人との出会いは一期一会だ。

大切にしようとしても、私が自分ばかりで何も変わっていないと、彼と出会えた縁は、私一人だけの未練となってしまう。それが嫌でひたすら彼との縁をゆっくり解き、無くしている。

辛くなる時もある、だけど前に進めていると感じる。家族や友人の支えの他に一つ言葉が背中を押すからだ。

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 「自分の道を行け!」

迷えば、この言葉からスタートできる。

私は矛盾している。自分を守る割に誰かといたがる、だけど誰かに縋っているように感じて素直になれない。この葛藤を日々繰り返し、一人でやるせなくなっている。ヘタレな私だ。

「変わりたいのでしょう?」

私の不安を見透かして、隣でそう言った彼との記憶が脳裏に浮かぶ。

一方的な気持ちでは、相手は歩み寄らない。一人が苦しいなら、声を出してお前が変われ。

それを教えてくれたのは貴方だ。貴方から貰った言葉で、私は進める。

一人に振られた、弱いなりにこれからを歩む、私の話だ。