私にとってバレンタインの思い出は切ないものだ。
一番最初にバレンタインというものがあると知ったのは小学生のころだった。
当時クラスの中に好きな人がいて、スーパーに行った際に母親にチョコレートを買ってもらえるようねだった。有名な菓子メーカーのものでパッケージにはディズニープリンセスのイラストが書いてあった。自分が食べたいなと思いつつ、ラッピングされたチョコレートを受け取って手紙も書いた。

好きな人に渡す時、小学1年生だった私はとても緊張していた。渡した後、ありがとうと言って受け取ってもらった。
期待していたホワイトデーには何のお返しももらえなかった。

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小学校の高学年になって好きな人にチョコレートを渡してみようと思った。
当時、友チョコを友達同士で交換するのが流行っていた。好きな人にあげるのは本命チョコ。本命チョコは手作りをすることが必須で女子たちはその日を心待ちにしていた。

私もチョコレートクッキーを手作りした。今は全く料理をしなくなったが小学生でよく作れたな〜と思う。クッキーの味見もよくしていて、今でもその味を思い出す。今は再現できないし、子供ながらどうやって作っていたのか分からず本当に謎だ。
ハート型にクッキーをくり抜き、上にチョコレートスプレーをかけておめかしさせた。好きな人にはなるべく綺麗で形が整ったものをあげたくて一生懸命に選んだ記憶がある。ラッピングも100円ショップで購入したハート柄のものを選んだ。メッセージカードも丁寧に書いて準備ばっちり。

そしてバレンタイン当日の日に好きな人に渡した。
その後最悪な事態になった。

こっそり渡したはずなのにクラス全員が私が好きな人に渡したことを知っていたのだ。
そして好きな人は、こんなもの食べられないと足でぐしゃぐしゃに踏みつけてゴミ箱に捨てたという。そんな噂を耳にした。
それを聞いた瞬間、目の前がまっくらになった。苦しくなった。本当に捨てたのか、真実を知りたかった。
ホワイトデーのお返しはもらえなかったし、本人と話したりする機会はなかった。
いつもこうなってしまう。気持ちが伝わらない、伝えても拒否されることが多いなと感じている。

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思い返すと、バレンタインに良い思い出はなかった。私はいつもバレンタインに振り回されているなと思う。

バレンタインは気持ちを伝えるチャンスと意気込み、大学生のときは好きな人に高級チョコレートをあげて結局フラれてしまったこともある。
お返しももらえなかった。なんだか寂しさを感じた。

多分そんなに仲良くない状態でプレゼントをあげても、当の本人は嬉しいとも思わないだろう。迷惑、もっとキツければ気持ち悪い、恐怖を感じる人もいるのだろう。自分だって同じことをされたら嫌だしそう感じるかもしれない。
ああもし彼氏や結婚している旦那さんにあげたら喜んでくれるだろうな。そうしたら心も満たされて本当に本当に幸せな気持ちですごすことができるんだろうか。
そんな状態の人がとても羨ましい。

百貨店に行くとチョコレート売り場の特設会場が目に入る。色々な種類のチョコレートが所狭しと並んでいる。大切な存在の人にあげる人もいるだろうし、自分でご褒美用に食べる人もいるのだろう。

いつかバレンタインを何とも思わなくなる日が来るのだろうか。
横目で見ながら、バレンタインの苦い思い出を思い出していつもぎゅっと胸が苦しくなる。