振り返ってみると、この大学生活は、私の異性への価値観を大きく変えた4年間だった。
私には、異性の友達と呼べる人が0人だった。幼稚園、小学生低学年の時は、一緒に帰ったり、地元の公園で遊ぶような友達がいた。しかし、高学年になるにつれ、何故か一緒に帰ることも、遊びに行くことも無くなった。特に喧嘩をしたわけでも無かったが、なぜか目を合わせることも少なくなり、妙な気まずさがあった事を覚えている。
中学校にあがってからは、異性に対して、苦手意識が生まれはじめた。それは、みんなが仲良しだった幼い頃と比べて、男女の差が明確に現れてきたからだと思う。体育は男女別になり、女友達と一緒にいても、異性の話題が多くなってきていた。私はそれが少し苦手だった。
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その頃の私は、見た目に対して周りの女子よりも無頓着で、服装や髪型に全く気を遣うこともなく、体重も平均よりも10kgは重かった記憶がある。所謂、ブスでありデブであった。
明らかに、異性からの扱いは、可愛い子ほど良く、ブスには冷たくなっていった。きっと思春期のルッキズムは大人の世界よりも明確で残酷だった。
極めつきは、中学2年生の頃、同級生の男子に告白されたことだった。こんな私でも相手にしてくれたことが嬉しくて、舞い上がった。どこにデートに行こうかと、LINEで彼とやり取りする度に胸が高鳴った。
1週間後、嘘だったと言われた。私をあざ笑うツイートがTwitterに書き込まれていた。こんなこと、漫画の世界以外でもあるんだなぁと思うと同時に、やはりブスに人権は無いのだと実感した。
高校は偏差値がそこそこ高いところに入学したおかげか、或いは周りの精神年齢が成長したせいか、中学よりは異性からの扱いに苦しめられる経験は無かった。しかし、やはり異性に対して苦手意識があった私は、まともに異性と話すこともなく卒業した。
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大学では、学外のテニスサークルに入った。ここで出会った同期が、私の視界を広げた友人たちである。
最初はやはり苦手だった。あまり関わりたくなかったし、テニスが出来ればそれでよかった。しかし、冬に男女混合の大きな大会があり、夏から全員が大会に向けて、厳しい練習に励むことになり、必然的にサークルのメンバーと過ごす時間が増えた。週に4日は顔を合わせていた。
そうなると、同期で練習や大会について話し合う機会が増えた。最初は積極的に意見を出すことにためらいがあったが、同期はみんな私の発言を求めてくれた。むしろ意見を出さないと怒られた。私の意見なんて誰も聞かないと思っていたので、かなり衝撃的だった。そうして少しづつ、自分も1人の仲間として尊重されているのを感じるようになった。
大会当日、私たちは3位という成績だった。悔しさで全員で抱き合った。そこには、男女なんていう概念が存在しなかったように思えた。
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それからの3年間は、同期に会うためだけにサークルに行っていたかもしれない。気づけば家族のように大事な存在になっていった。
私は大学3年になると体重も標準体重になっていった。そのおかげで自分に少し自信がついて、かわいい服を着たり、自分磨きをするようになった。少しはブスな自分から抜け出せていたと思う。でも、「痩せた?」とは言われたものの、周りからの扱いは良い意味で全く変わらなかった。彼らは、私が太っても痩せても、決して扱いを変える人ではないと、今も胸を張って言える。
今は異性に対して苦手意識を持たずに話せるようになった。人からしたら大したことがないかもしれないが、私にとっては大きな成長だ。
同期とは卒業して別々の道をお互い行くことになるが、きっとどこかでふと集まったりするのだろうと思う。こんな素敵な友人に出逢えて、本当に良かった。