私は、LINEの既読機能があまり好きではない。何なら、なくなって欲しいと思っている。メールみたいに、送受信だけを教えてくれればいいのに。LINEを使い始めたときは特に気にならなかったけれど、ある出来事をきっかけにこの機能を厄介だと感じるようになった。

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それは、私が就職活動の真っ只中だったときのこと。別の大学の友人とたびたび連絡を取り合っていた。彼女は、上京してからも頻繁に会う間柄だった。その友人は、実習と数回の面接だけで、すでに卒業後の進路を決めていた。単位も充分に取っており、卒論もない。つまり、時間をもて余していたのである。

遊び放題の友人とは反対に、私はかなり忙しい日々を送っていた。友人からLINEで雑談や遊びのお誘いなどが届いても、内容を読んですぐには返せないことが多かった。それでも、必ずその日中には返信をしていた。企業の説明会や履歴書のブラッシュアップ、面接の合間を縫いつつ、待たせても半日で返事をする。これで問題ないと、私は思っていた。

しかし、友人は違ったようだった。当時、彼女はとにかくせっかちで、相手の立場で物事を考えられないというきらいがあった。既読をつけて時間が経ってしまうと「どうかな?」「スケジュールそんなに分からない?」などと、高頻度で催促された。

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「いつも半日以内に返しているのに、何で待てないの?」とイラついてしまうようになった。それと同時に、就職活動をしたことがないからといって、こんなにも分かってもらえないものなのかと、怒りの感情さえ芽生えた。

誰もが相手に寄り添おうとするとは限らないのだと言い聞かせ、何とか怒りを鎮める日々。そんな中で、私は気づいた。既読をつけなければいいのではないかと。そうすれば、スマホを見られない状況で返信できないと思ってくれるかもしれない。もし、これでもダメなら、友人とは今後の付き合い方を考えようと決めた。

その日から早速、実践してみた。すぐに返せないときは、LINEの通知を見るだけにしてトークを開かない。既読をつけたら「ごめん、面接だった!」などと、最初につけてすぐに返信。徹底したら、友人から追いLINEは来なくなった。ストレスなく落ち着いてやり取りできるようになって、私はホッとした。

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あれから結構経っているけれど、追いLINEされるのはいまだに怖いと感じてしまう。ただでさえ、返信するときにも内容に問題はないか考えているのに、既読をつけるタイミングまで相手に気を遣わなければいけないことが煩わしい。今でもこの機能は、私のストレスになっている。

いつか、既読の機能がなくなるとき。きっと嫌な思いをする人は、かなり減っているだろうと思う。「既読がついているのに、何で返事してくれないの?」「既読スルーするなよ」。そんな会話もなくなる。私にとってもかなり負担が減ることになる。

不満はあるけれど、タイミングに気をつけて、相手の気持ちを考えながら対応する。何だか、仕事に似ている。頭の中でそう変換してみると、何となく乗り越えられそうな気がする。とりあえず、"既読"とはもうしばらく上手く付き合っていこうと思う。