「初めまして」の人と話す時は、ものすごく緊張する。
相手が自分をどう見ているのか、会話をどのように進めていったらいいのだろうかと、不安な思いが頭の中を駆け巡る。

ASDのため、一般の方の人見知りとはちょっと性質が違う気がする。

緊張しているから、「どうしよう…」と小心者らしい面ばかりかと思いきや、早口で話しすぎてしまったりして、暴走機関車のようになってしまうことがあった。

◎          ◎

今はその場を明るくするような、ちょっとくすっとできるような言葉は言うようにしているけれど、必要のないことは言葉として発さないように、抑えている。

自分が何を言い出すか怖くて怖くて。
暴走しないように、機関車を必死で手で止めている。
早口にならないように、相槌を「へぇ〜〜〜(ばす時間5秒以上)」と長くしてみたりもしている。

でも、好きなことが共通していると、そこからブワッと話が膨らんでその空間が愛で包まれるような気がするから嬉しくなって良い暴走の仕方をする。

私は音楽を聴くことが好きだから、好きなアーティストを相手に尋ねて、そこから話を膨らませる。

世代問わず色々なジャンルを聴くのでそこから深掘りできるのが自分の強みかなと思う。

先日通っている就労支援施設の50代の職員の方と初対面で話した時も、自分が聴いている音楽の話をして好きなアーティストを尋ねた。

すると、「今はあんまり音楽自体聴いてないけど、⚪︎⚪︎とか⚪︎⚪︎、若い時によく聴いてたな。懐かしいな〜」と顔をほころばせて、話が盛り上がった。

◎          ◎

その次に会った時に、「そういえばヌートリアみゆうさんがこの間好きだと言っていた⚪︎⚪︎、私もCD持っていましたよ」と話が発展した。いや、相手が発展させてくれたの間違いか。まあいいや。

耳が聞こえる人である場合、今は音楽を聴いていなくても過去には聴いていて、何かしらの思い入れや思い出がある場合が多いなと思う。

「あの曲を聴いていた頃は、何をしていたかな」「あのアーティストのライブに行った時は、私や周囲はあんな状況だったな」と、回想することも多い気がする。

それに、音楽にはリズムがある。それがコミュニケーションにおいても、ゆるやかさを生み出してくれるのかなと思う。

◎          ◎

アーティストのライブ会場だと「初めまして」の人とも難なくスムーズにコミュニケーションをとれる私。隣の人に「今のヤバかったですね〜!」と話しかけることも、普段ならできないこと。同じ対象を「好き」という気持ちが共通しているという、確固たる安心感があるのかな。

「好き」という気持ち、「愛情」を人と分かち合うことができると打ち解けるスピードもくなる気がする。

例え相手が好きなアーティストが自分が興味のない人だったとしても、良いところを熱弁してくれたりするとテンションが上がる。

「好き」をシェアすることが私にとってのコミュニケーション術だ。