「私は人見知りです」
今は胸を張って言える。
でもこの事実を自分の中で恥ずかしくないこととして、素直に受け入れるまで時間がかかった。
思えば幼稚園の頃から人見知りだった。
お母さんから離れるのが嫌で、幼稚園バスには毎朝号泣しながら乗っていた。
小さい子が大好きなはずの公園も私にとっては知らない同世代の子がたくさんいる恐怖の場所だった。
お母さんとお買い物に行くのも幼稚園の同級生に会うのが嫌すぎて毎回渋っていた。
◎ ◎
小学校に上がってからも変わらなかった。
お母さんから離れるのが嫌で毎朝号泣しながら登校していたし、教室についてもずっと泣いていた。学校に行きたくないとずる休みも何回かした記憶がある。
小学校中学年に上がり、さすがに通学前に泣かなくなったが、クラスになかなか馴染めなかった。
あんなにお母さんと離れるのが悲しくてギャンギャン泣いていた私だったが、集団の中でどう振る舞えばいいかわからなくなり、どんどん静かになっていった。そしてクラスの隅でひっそり過ごす「陰キャラ」として活動を始めることになる。
そんな状況に陥っても私にとって「人見知り」であることは恥ずかしいことで、なかなかその事実を受け入れられなかった。
どうにかして、人見知りを卒業しなきゃ、誰とでも話せるようにならないと!
謎の義務感に追われながらも私は人見知りを卒業できないまま時間だけは経っていき、気づけば高校を卒業した。
そして私は上京し、誰1人知り合いのいない大学に入学した。
◎ ◎
「今までの私を知ってる人はどこにもいない!大学こそは自分を変えるぞ!!」
そう意気込んだ私はとにかく人に話しかけまくった。もちろんうまくいかずに、失敗することもあった。
でもそんな自分の努力もあってか、友達に恵まれ、楽しい学生生活を過ごすことができた。
「もう私は人見知りじゃない!!」
学生生活がちょっと上手くいったくらいで調子に乗った私は、大学卒業とともに勝手に人見知り卒業宣言をし、社会に出た。
そして、社会人になって1年目。
人見知り卒業宣言をした通り、昔の私では考えられないくらい、会社の人たちとたくさんコミュニケーションをとることに成功し、やる気ある新人として評価していただけた。
よし、スタートダッシュ成功!!
これで私の将来も安泰!!……なわけなかった。人生そう上手くはいかない。
社会人になって2年目。
1年目無理をして、いろんな人に媚を売りまくっていたせいで、自分の実力以上の能力があると勝手に誤解されてしまい、無駄に責任の大きい仕事を任されるようになってしまった。慣れない業務に少しずつミスが増えていく。私のミスが増えるにつれ、1年目優しくしてくれた人たちは次第に冷たくなっていった。
怒鳴られる、30分以上の叱責、自分だけ会議に呼ばれない……。
そんなことがどんどん当たり前になっていった。
ああ、もう無理だ。
そんな毎日を繰り返すうちに私は会社に行けなくなった。
◎ ◎
会社に行けなくなって、1ヶ月くらいが経った頃、中学時代の友達の結婚式があった。
友達の晴れ姿を見るのはとても楽しみだったがその子との共通の友達があまりいない私にとって、披露宴の食事をしながら雑談が恐怖タイムだった。
どうしよう、人見知り発揮しちゃう……何話せばいいんだろう……。
そう泣きついた私に母がこう言った。
「そういう場苦手なら、別に無理して話しかけなくてもよくない!?誰かに話しかけらたら話せばいいんだよ!!」
なるほど……無理しなくていいんだ……。
人見知りを隠そうと、必死に今まで無理をしていたけれど、そんなことしなくてもよかったんだな……。
母の言葉を聞いてやっと気がつくことができた。
母の言われた通り、無理して話しかけるのをやめて挑んだ結婚式は、いつもより気楽で思ったよりも楽しめた。
そして心にこう決めた。
もう無理をするのはやめよう。人見知りの自分をちゃんと受け入れよう。
今、私は充電期間を経て転職活動を始めた。
新卒での就活時代は「私、人見知りじゃないですよ??面接得意ですよ!」感を必死に出していたが、もうそんなことはやめて、ありのままの自分で面接に挑んでいる。
人見知りであること、これはどう頑張っても私の場合は多分一生治らない。
でも今回、それを素直に受け入れられたことは今後の人生を楽に生きるために大きく役立ったように思える。