1人暮らしの自宅で、日曜日、おもいっきりクッキーセットを並べて、クッキーとチョコを作る。

私はサバサバ快活系女子だが、意外と、1人でキッチンに立ち、もくもくと誰かのために料理をするのが好きだ。

先日、出張で札幌に滞在した時に、職場の同年代の男性に「週末、お菓子づくりの学校に通いたい」と話していたら、「ええ?なんで?そんなことするの?笑」と笑われたことがあるが、今から専業主婦を目指しているのではなく、私は純粋にお菓子づくりが好きだ。

今年は、猫のクッキー缶を作ろうと思い、前日のうちに材料をたくさん購入してきた。もちろん、1番は彼のため、それ以外も友人たちに久々に会うので渡す予定だ。

早く作りあげて、彼の喜ぶ顔が見てみたい。そもそも、彼はあまり甘いものを食べない人なので、全体的に砂糖少なめにした。

2021年のバレンタインだった。

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前職の先輩である女性社員に、4月の入社したての頃にいわれたことがある。
「男性を、自分からあまり追いすぎちゃダメよ。付き合ったら、冷めちゃうの」

私は恋愛初心者だったので、いいことを聞いたなと思った。

そんなアドバイスもよそに、いつしか私は彼にみるみる惹かれてしまい、付き合って、とくに遠距離になってからは、どこか「彼のために」とつい、尽くしていた。

クリスマス、誕生日、年末年始、バレンタイン……。

何かイベントがあるたびに、やっと彼に料理をふるまったりお菓子を渡せると、どこか期待していた自分がいた。自分が東京にいて、彼と同じ職場で働き、毎日のように彼の姿を見ていたら、全然違ったのだと思うが、遠距離ゆえ、どうしてもそういったイベントが楽しみだった。

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私は、次はいつ彼に会えるだろう?と思って過ごしていたが、彼は東京でどんどん仕事に精を出し、昇進もし、気づけばライフスタイルも性格も変わり、隔たりができてしまった。

年末にLINE1本で別れを告げられた時、私は、1人地方に取り残された感じがして、最初は悲しかった。

「私たちの関係性って、そんなものだったんだ……」とも思った。「またやり直せると思ってたのに……」と彼に対し憤慨する気持ちもあれば、「あの時もっとこうすれば良かった……」と自分の言い方に後悔することもあった。

いずれにせよ、別れがこんなに悲しくて悔しいものなんて、知らなかった。初めての彼だったがゆえ、初めての経験だった。

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それから、季節が一周する。
今年もまたバレンタインがやってくる。

もうあの彼にチョコやクッキーを渡すことはない。
まだ私は彼のあの笑顔を見たい気持ちは残っているけれど、彼はきっと、もう私のことを幸せにしたいとは特に思っていないだろう。特別な関係には、ピリオドを打っているのだから。

チョコやクッキーを彼に渡すことはない。ただ、今後、私は仕事で成果をあげたら、彼にお礼と報告をしたいと思った。今後も、そんな関係でいられたらと思う。