バレンタインはお菓子作り好きの私にとっては、「合法的」に作ったものが食べてもらえる一大イベントだ。毎年2月14日にはみんなにと、学校に30個ほどのチョコを持っていく。

それがずっと続くと思っていた。もうここ2年そんなに大量のお菓子なんて作っていない。食べてくれる人がいないから。大学の春休みがこんなに長いだなんて知らなかった。高校の時は、夏休みも冬休みも春休みも名前ばかりで、夏期講習、冬季(期)講習、春季講習、なんならお正月特訓に模試三昧のおまけ付きの毎日だったから、いざまとまった休みをもらっても何をしていいのか全く分からなくなった。ただ、分かるのは一緒に暇を潰す人がいないということ。

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大学で友達と呼べる人は少なくともまだいない。別に仲が悪いわけでも、誰とも話さないわけでもない。ただ、もう自分の感情を曝け出して傷つけ合うような年でもないから、合わない人とは距離を取るし、私の周りに寄りつく人は大抵、分からない問題を教えてだとかモテるためにはどうすればとか何かしらを私から授かろうという人たちが多い。

そんな人達は私を「なつめ様」、「才色兼備」、「完璧」とか言って私を褒めそやす。ハイヒールで背伸びしたような、メッキの剥がれかかった私にだ。彼女らに褒められる度、私の中では会社の上司が言っていた:「簡単に自分を『すごい』と褒めるような奴とは俺は関わらない。言い方は悪いがそいつはほぼ確実に俺より格下。何も俺には与えてくれないから」が何度も反復された。かと言って私は自分から離れようとすることもできない。大学で特に試験に関しては情報力がものを言う。他に頼るばかりで自己解決しようともしない、言葉を選ばず言うなれば「格下」の相手に後れを取るのは絶対に嫌だった。結果、来るもの拒まずの姿勢になった。

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こうなって初めて、クラス全員に何の迷いもてらいもなくチョコを渡せていたあの環境、あの仲間達はかけがえのないものだったのだと分かる。小中高と今までも私を崇め奉るような人はなぜかいたが、いずれも私のいるクラスより学力で分けられたクラスが下の人達だった。スポーツとか芸術とか人の美点はもちろん様々だけれど、私のいたクラスは学力で分けた時に、自分と同じ目線で、同じ歩幅で、けれどそれぞれがもっと速くと努力する、それに感化されてまたさらに努力する、そんな場所だった。だからあのころは私も虚勢のための背伸びではなく、届かないものに手を伸ばすための背伸びができていた。

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でも、もうあの場所はない。あの頃は良かったと今を見下すのは醜い。情けないことに今私は間違った背伸びをしている。けれど、大学で研究室に配属される今年こそは自分で環境を選んで、仲間を選んで、そこで根を張れるようにしよう。環境を選ぶのは大事。でもそれだけじゃダメだから。上辺だけの言葉ではなく、その人の心から尊敬できるところを見つけて。そのための知識をつけて。

そしてきっと、次のバレンタインにはたくさんのお菓子を作るんだ。私の仲間達に。