人生の中で、出会えて良かったと心から思える人に巡り合えることはとても幸運なことだと思う。

私は小学校高学年くらいの頃から、周りを俯瞰して見る癖があった。
そのせいで、小さい頃から、周りが爆笑しているような少しくだらない話題についていけず、無理して笑うことは少なくなかった。それでも、人と関わることは好きで、周りに合わせられる性格だったので、その頃でもよく遊ぶ友達は多くいた。
中学校に入学してからは、湊かなえや東野圭吾などのサスペンス小説を好きになったことがきっかけで小説家の考え方に影響を受け、人間観察が好きになり、年相応よりは落ち着いているような、冷めているような、そんな感情を持っていた。
周りがする恋愛の話もあまり共感できず、友人の話を聞くのは好きであったが、自分には関係のない話だと思っていた。

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そして、私は高校に入学した。
ここでの数人との出会いが私を変えることになるが、ここでは1人の友人を紹介する。

高校は、同じような偏差値の人たちが集まっていたからか、中学のころまで抱いていた周りとの考え方のギャップが少ないように感じた。今となっては初めての会話がどんな内容であったか全く覚えていないが、名前順も背の順も、座席も近くなかった1人の女の子と仲良くなる。ここでは、頭文字をとってこの子をHと呼ぶ。
明るい校風の学校であったからか、クラスのほとんどの子が外交的で癖のある子も多かったが、Hと初めて話したとき、初めて会ったとは思えない話しやすさを感じた。

お昼ご飯を食べる時やペアを組むときなど、何かとその子と一緒になることが多くなった。
Hは余計なことを話すタイプではなく、私と一緒にいるときは笑顔だが、まだ仲良くない人には必要以上に愛想良くしないタイプであった。性格が似ていたわけではないが、考え方や価値観が似ていて、過ごす時間が多くなるにつれ、どんな悩み事も共有できるようになっていた。同じ年代のアドバイスをすんなり受け入れ、納得できたのは初めてだったかもしれない。それほど信頼していた。

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高校1年生の時、初めての彼氏ができた。
それまで人を好きになったことがなく、優しい人だから好きになるかもという理由で告白を受け入れたが、自分と相手の気持ちの差に疑問を抱くことが多かった。皆と違って人を好きになれないかもしれないということに悩まされ、辛い思いをしていたが、Hはいつでも親身になって聞いてくれた。
あまり人に言えない悩みだったからこそ、Hは私の支えだった。好きではないが、良い人であるから別れられないという私のわがままな気持ちに対して、どっちの幸せにもならないと、別れの助言をくれたのはHだった。もう悩まなくていいと思うと、私の心は軽くなった。彼女のおかげである。
私には足りない経験を沢山していて、新しい考えをくれるような子だった。

奇跡的に高校2年生まで同じクラスでいられたが、高校3年生では違うクラスになった。
そのクラスでも仲の良い子はいたが、Hがいないことは想像以上に心に穴が開いたようだった。その後コロナ禍になり、さらにあまり会えなくなった。
定期的にメッセージやテレビ電話などもしていたが、毎日学校で会って他愛もないことで笑って、約束もせず一緒に帰っていた日々が当たり前でなかったことを実感した。

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学校に登校できるようになってからも、一緒にいることはずっと変わらなかったことがとても嬉しかった。

卒業が近づく中、大学に入ったらいつの間にか疎遠になってしまうことをとても懸念していたが……しかしそんな心配は必要なかった。私たちは大学に入っても週に1回は会った。

私が思っているように、Hも私との居心地の良さを感じていてくれて、特別な友人であると思ってくれていたことを知った時はとても感動した。
私の青春を彩ってくれて、お互いのことをこんなにも大切に思い合える友人に出会えたことは、とても恵まれたことであると思う。
気を遣わず、大人になってもずっと一緒にいたいと思わせてくれる彼女との出会いは、私の視界を広げてくれた。