もともとさほど他人に興味がなかった。
1人で外食も映画も気にならないし、こんな私にも学生時代からよくしてくれる友達もいた。
狭く深くタイプだったので仲のいい友達がいてくれればいい、そう思っていた。
しかし産後、困ったことになった。
私はママ友ができない。
◎ ◎
よちよちと歩き回る子、まだ寝返りをしない月齢の子、おもちゃを取り合って泣いている子…。
近所の支援センターはいつも子供の歓声にあふれている。
私はその中で内心焦っていた。
まず何を話していいかわからない。
娘と同じ月齢くらいの子供ときているママはいるけど、なんて話しかける?
全然浮かばない。
あのお母さんはこの前話しかけてくださった人だ!
でも何を話したか全く思い出せない。
出産で脳が死んだのか?
そこに一人のお母さんが話しかけてきた!
「もう結構おはなししますか~?」
「え?!あ、はい!あんまりです…」
どっちだよ、と思うような返事。
苦笑いの相手。
流れる気まずい空気。
「夜まだ寝られないですか?」
見かねた保育士さんが話しかけてくださる。
睡眠は足りてます、コミュ力が足りてないんです。
◎ ◎
別にママ友ができなくても生活はできる。
ただ、娘の発達への影響が心配だ。
親が知らない人と会話をする姿を見て、真似をして仲良くなるのでは?
もし私がこのまま支援センターで膝を抱えてボッチを決め続けた結果、幼稚園などに進学した時に「お母さんの真似しとこ~」と部屋でぽつんとしていたら?
大人でも子供でもいろんな人と関わった方が今後にいいはず…。
ぐるぐる考えながら意を決して出発!
今日は支援センターが休みだから児童館に行ってみよう!
どきどきしながら赤ちゃんルームで娘を遊ばせること2時間。
誰も来ませんでした。
◎ ◎
私の母はママ友が多かった。
転勤族が多い社宅で協力する風土だったのか、昭和の人間性なのか、外に出れば誰かしらと楽しくおしゃべりしている。
幼稚園に通う年になってからは、よくお互いの子供を預けていた。
特に私の家は人が集まりやすかったようで、常に子供が遊びに来ていてまるで保育園のようだった。
「ねぇねぇ、君はなつ(妹)の友達?」
「ちがう」
ならなんでうちにいるんだよ。
そんなこともたまにある家だったので、子供ができれば自然につながりができるものだと思っていたのに。
◎ ◎
あの3人のお母さんはもともと友達同士らしい。
子供もまだ歩かないからお互いの子供が接触したのち、会話に発展する機会もなさそう。
今日もママ友ができなかった。
たっぷり遊びご機嫌の娘と対照的に、しょんぼりしながら帰宅。
格好悪くて、寂しくて、勇気も言葉も出なかった自分が嫌で涙が出そうになる。
ピンポーン!
インターフォンがなる。
玄関には知らない女性と娘より少し小さな赤ちゃんが立っていた。
「あ!こんにちは!隣の○○です!」
言われて思い出す。
娘の夜泣きがひどかった時、同じ階の住人と廊下ですれ違うたびに「うるさくてごめんなさい」と謝っていたけど、お隣さんとも話したような…。
「前回話しかけられたときに、同じくらいの子供がいるなら連絡先聞けばよかった〜と思って!突撃してきちゃいました!」
その日初めて、私にママ友ができた。
◎ ◎
「外歩く時ってハーネスつけますか?」
母のようにご飯に行ったり、社宅の部屋に招待したりするママ友はできていない。
でもあれから少しだけ勇気が出せるようになり、自分から話しかけられるようになった。
深く考えなくていい。
お隣さんがアポなしでうちに来て、結果友達になれたように、当たって砕けてみればいい。
最近は会話のハードルが確実に下がったと感じる。
1歳2か月の娘にどんな影響を与えているかはわからないけど、きっと前よりはいいはずだ。
まだまだ先は長いし、転勤の可能性もあるけど。
私はママ友を作りたい。