私が高校生だった頃、声優がパーソナリティを務めているラジオに出会った。その彼こそが、私の世界を大きく変えてくれた人物だ。
送られてきたメールに書かれていた相談に、彼は真摯に答える。その答えがまるで私の想像していたものと違い、とても素敵な価値観を持った人なんだと知った。そのラジオをきっかけに私は彼を応援するようになった。すると自然と彼の情報、彼の放った言葉が手元に集まる。その中にとても驚いたエピソードがあった。

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彼はドイツ生まれドイツ育ちの日本人だ。そんな彼が18歳の時、声優になるため単身日本にやってきた。声優になる。その思いだけで親の手も借りず、自身の行動力だけで日本へとやってきた。

その熱意が私には羨ましかった。けれど羨ましがっていても何も変わらないことは彼自身がよく話していることでもあった。興味があるなら挑戦すればいい。それも彼に教わった価値観だ。

それまでの私は周りと違うことをすることを恐れていた。目立つことが苦手だった。
けれど私が19歳の時、ヨーロッパ旅行へ行ける機会に巡り合った。旅行先にはドイツも含まれていて、これは彼の故郷へ行くことのできるチャンスだと思った。
私は迷うことなく行くことを選んだ。きっと旅行なんて学生のうちにしか行けない。しかも2週間なんて社会人になったらそんな長期休暇はきっと取れないだろう。そう思った。これがきっと最初で最後のチャンスだ。実際、その2年後にコロナウイルスが流行。通っていた専門学校の卒業旅行もなくなったくらいなので、私の決断は正しかったのだろう。

そして私は12月の2週間、ヨーロッパでの旅行を満喫した。
彼が、行くならクリスマスシーズンにぜひ行って欲しいとオススメしていた時期に丁度重なり、クリスマスムードのヨーロッパを体験できたのも幸運だ。
クリスマスマーケットで見たホットドッグは縦に穴をあけ、そこにケチャップとマスタード、そしてソーセージを入れて作られていた。それすらも驚きだった。ドイツでは酒場に行き、賑やかさを堪能。様々な国の美術館や宮殿に足を運び、自分の目でそれらを見ることが叶った。

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こうして目で見たものや聞いたもの、現地の人とのふれあいは人生の素晴らしい糧になったと思う。価値観の違いや文化の違い、人の温かさにも触れることができ、今まで自分の中にはなかった世界を見ることができた。
彼との出会いが様々なきっかけやチャンスへと繋がって、私の世界を広げてくれた。そのことに私はとても感謝している。
人生初のライブも人生初の1人旅行も、彼がきっかけをくれた。選んだのは自分かもしれないけれど、選ぶチャンスをくれたのは彼だった。こうやって知識や経験が広がっていくことが今ではとても楽しい。

彼はよくファンに向けて「人生楽しんでる?」と聞いてくる。彼自身が人生を楽しみ、そしてファンにも楽しい時間を分けてくれる。どんな時でもエンターテイナーである。とても尊敬しているし、私もそんな風に生きたいと思っている。
私も彼のように人生を楽しみ、誰かを笑顔にできるような人物になりたい。そんな思いを持って、今、この文章を綴っている。この文章が、私の経験が、誰かの心に届いたら、それはまた私の世界が新しく広がったことにもなるので、とても幸せである。

これからも私は挑戦し続ける。自分の世界を広げ、自分の人生を楽しむために。