今でも思い出す春といえば、妹が生まれた桜が満開の春の日のこと。
朝起きると隣で寝ているはずの母がいなかった。その日は保育園の入園式だった。
不安な気持ちでリビングへ行くと祖母が、母は病院にいること、私の妹が無事に生まれたことを教えてくれた。

私が入園式へ着て行くためのブラウスと、着るのを楽しみにしていた母のお手製花柄スカートは、ピシッとアイロンをかけ準備されていたけど。
母がいない。
当時の私は妹が生まれた嬉しさよりも、母が入園式にいない不安の方が大きかった。
この頃からだろうか。心配性な性格が災いしてか、ワクワクを楽しみきれず新たなスタートに対していつも不安の方を大きく感じてしまう。

我ながら勿体無いな、と思う。楽しい!と言う気持ちやワクワクは大きな活力になる。毎日楽しそうに過ごしている人は、周りも前向きにしてくれるし、なにより輝いてみえる。
私もそんな風になりたいのに。
慎重に、安全に、と石橋を叩いて渡るどころか心配しすぎて叩き割ってしまうタイプの私。
そのくせ変わりたい気持ちや何かへの憧れは人一倍強くて、行動を起こしはしてみるものの、いつだって不安でいっぱいで。自分に自信がない。

◎          ◎

思い起こせば3年前、念願の職業に転職した時もそうだった。
自分がしたいことに挑戦するために選んだはずなのに、上手くやっていけるかな……失敗したらどうしよう、と不安だらけ。結局半年ほど経つと環境にも慣れ、あんなに心配しなくてもよかったな、なんて思ったりしたのだが。

そして今からちょうど1年前。長く遠距離をしていた彼氏の住む街へ引っ越す決断をした。
なにかの始まりは、なにかの終わりも意味する。大切に育ててくれた職場、幼い頃から憧れていた土地を離れることになった。
彼氏と暮らすことは自分で選び、すごく楽しみだったはずなのに。
もし別れることになったら?
街に馴染めなかったら?
例に漏れず私の心の中は不安でいっぱいだった。それはもう、これまでにないほどの不安。

不安を打ち消すため、とにかく情報を集めた。新たな街の情報、同棲に関する情報。
もし別れることになった時に自分の心が折れてしまわないよう、「別れても人と住んだ経験が自分の糧になるはず」なんて、気持ちに保険までかける始末。
情けないが、臆病な私はなかなか変わらない。

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あれから1年。この春、結婚することが決まった。
もちろん今回も不安とワクワクが混在しているが、以前と変わったところがひとつだけある。

ワクワクにもちゃんと目を向けること。不安を解消する情報集めじゃなく、ワクワクを倍増させるような情報も集めてみること。
それができるようになったのは、きっと私にとっては大きな進歩だ。

妹が生まれた日も、新たな職業へ踏み出した日も、彼氏の住む街へ降り立った日も、不安でいっぱいで泣き出しそうな顔をしていた私へ。
今年も花は満開、らんまんです。
顔をあげて、いつもより桜は色鮮やかに生き生き見えるはずだから。