数日前、X(旧Twitter)で衝撃的な情報を目にした。
サイゼリヤのイカ墨パスタがリニューアルしたという話だ。
それだけならさほど驚かなかったかもしれないが、その投稿に添付されていた画像がショッキングだった。
イカ墨の色が、極端に薄くなっていたのだ。

このエッセイを読んでくれている人の中には、私と同じように衝撃を受けた方も多いのではないだろうか。元々具材のイカを見つけるのを妨げるほど真っ黒だったパスタが、グレーくらいの色合いになっていた。
はじめはこの投稿者のジョークなんじゃないかと思ったが、「サイゼリヤ イカ墨」で検索してみると、似た投稿がわんさか出てきた。ライブドアニュースの記事までヒットした。これはもう、本当なんだと認めざるを得ない。詳細を見てると、メニュー名も「イカの墨入りスパゲッティ」から「イカの墨入りセピアソース」に変わったそうだ。

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私はサイゼリヤが好きだ。
私が住んでいる札幌にサイゼリヤが出店し始めたのは、確か高校生くらいの時だった。だからきっと本州の人たちに比べると、通ってきた歴史は長くない。それでも、愛では負けていない自信がある。むしろ子供の頃はなかったからこそ、安いのに美味しいメニューの数々にありがたみを感じることが出来ている気がする。
友達と、彼氏と、1人でも。幾度となく訪れてきた。そのなかでも、イカ墨パスタはよく頼んでいた。たまに他のパスタに浮気することもあったけれど、その度に「やっぱりイカ墨だな」と思わされた。もちろん他のパスタも美味しいのだが、イカ墨は私にとって特別な存在だった。そもそも私はサイゼリヤ以外でイカ墨パスタを食べたことがない。イカ墨パスタといえばサイゼリヤ、というのが私の中での認識だった。

これは実食しに行かなくては。
そう思い、家の最寄りの隣駅付近のサイゼリヤにやってきた。今、このエッセイを書いている私の目の前には「イカの墨入りセピアソース」が置かれている。文章ではあまり意味がないと思うが、読者の皆さんに実況で感想をお届けしたい。

写真で見た通り、色は以前より確実に薄い。
これはさすがに予想通りだが、イカ墨らしい風味は控えめになっていた。
けれど正直、これはこれでいいかも、と思った。あっさりとイカ墨風味を楽しめるし、口の周りも汚れにくい。
しかし、そう思ってしまった自分に少し、後ろめたさを感じた。もう食べられないかもしれないかつてのイカ墨パスタを軽んじているような気持ちになったのだ。学生時代から数年間付き合っていた人に振られて、「あんなに好きになれる人、もう絶対現れない……」なんて言っていたのに、1年も経たないうちに新しい人に出会えちゃった、みたいな。案外好きになれちゃった、みたいな感覚に陥った。

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このような気持ちが湧くのは、きちんとお別れできなかったせいもあるのかもしれない。私がリニューアルを知ったのは、既に全店でセピアソースに変わった後だった。変わる前にじっくり味わうことが出来ていたら、ちゃんとサヨナラしていたら、こんな感情は抱かなかったかもしれない。

とはいえ、実際には旧イカ墨パスタが私のことを好きだったことは一度もないので、私には後ろめたく思う権利すらないのであった。
これからはたまにかつてのイカ墨のことを思い出しつつ、セピアソースをありがたくいただくことにしたいと思う。