子どもの頃から、小説や漫画に出てくるAIが好きだ。

AIという存在が登場する物語を初めて読んだのは、小学校低学年の頃のこと。海賊船の船長を務める少女の護衛役がロボットだった。

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その小説では「人工知能」や「AI」ではなく、終始「ロボット」という呼称で表現されていたが、高度な知能を持ち、主である船長を守り抜く彼は、今思うとかなり優れた人工知能だったと思う。

人間とロボットという種族の差(?)にとらわれず、お互いに信頼し合う船長とロボットのバディが、当時の私はとっても好きだった。

その児童文学を読んだ後も、私は小説や漫画を通して様々なAIキャラクターたちに出会った。小学校高学年の時には、世界一の大怪盗が住まう飛行船を操る「世界一の人工知能」。

中学生の時には、兵器として開発されたはずだったのに、気づけば暗殺のターゲットと、彼が担任を務めるクラスの仲間たちと固い絆で結ばれていた「AI搭載型固定砲台」。

(※敢えてタイトルを伏せて書いています。上記3つの物語のタイトルが全て分かった方は、私と本の好みがかなり近いです)

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高い能力を有し、人間には絶対にできないパフォーマンスを華麗に成し遂げていく人工知能たちの共通点は、人間と固い信頼関係で結ばれていることだった。主と護衛役、仕事上のチーム、そして同じクラスの仲間たち。

その関係性は、どれも少しずつ違うものだったけれど、根底にある想いは皆変わらなかった。そんな彼らの冒険を、子どもだった私はいつも夢中になって追いかけていたものだ(子どもじゃなくなった今でも夢中じゃないか!という周囲からの声は聞こえています)。

現実の世界にも、こんな素敵なAIが存在してくれたらなあ。

そして、私たち人間と手に手を取り合って一緒に生きていけたら、どんなに素晴らしいだろう。そう思って、AIと人間が仲良くなる小説を自分で書いていたこともある。
でも、それはあくまで理想であって、現実はなかなかそうもいかない。

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AIはいつか人間を超える。今まで人間がやってきた仕事を全て取ってしまう…。そんな言葉を初めて聞いたのは、いったいいつだったか。

年号が令和と改まった今、その言葉たちは現実のものになろうとしている。とうの昔に亡くなった画家の作風を、そっくり真似た作品を生み出す。司法試験の問題を解かせれば、あっさりとクリアしてみせる。将棋でプロを打ち負かすのも朝飯前。AIに関する、そんなニュースを耳にする度に、私はいつも背筋が少しだけ凍る。彼らの性能はいったいどこまで進歩するんだろう。進歩に進歩を重ねたその先には、果たしてどんな未来が待ち受けているのか。

「人間なんていらない」

 いつかAIにそう判断される日が来るとして、その時私たちは、彼らに抵抗する手段を持ち得ているのだろうか。

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子どもの時から10年以上、変わらず私を虜にしてくれるAIキャラクターたち。AIの進化がここまで色々言われている今になっても、私は彼らの活躍を見たくて、今日も本を開き、アニメを再生する。何で私はAIが出てくる話がこんなに好きなんだ?改めて考えてみて、一つの結論に行き着いた。

彼らは皆、自分の能力を、人間を「傷つけること」ではなく、「助けること」に使っている。人間よりも屈強な体と高い処理能力を有している彼らなら、その気になれば一瞬で人間を支配下におくことができるのに、彼らはそれを望んでいないのだ。

周囲の人間たちも、彼らの能力を、単純に私利私欲を満たすためには悪用していない。普段はまるで人間の友達同士のように接して、人間の力では物理的にどうにもできない事態に見舞われた際、AIの能力に助けを求めている。

そしてAIたちもそれに応える。彼らが単なる研究材料として、開発した研究所等に留まり続けていたら、絶対に生まれなかった交流。その中でAIたちは進化していく。

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私が好きなAIキャラクターの中には、人間たちとの交流を通じて「感情」を自覚する者もいる。あまりにも美しく温かく描かれたそのシーンに、私は心から感動した。

種族の差を乗り越えて、お互いに足りないところを補い合い、その交流の中で一緒に成長していく。これは、人間とAIの両方が出てくる物語だからこそ表現できる形の愛なのだ。

人間同士のそれとはまた異なるその形を見つめ続けたくてたまらないから、私はきっと、AIの出てくる物語をこれからも追いかける。

私はガッツリ文系の人間だ。AIがどういう仕組みで動いているのかも、世界のAI研究がこれからどんな風に進んでいくかも、正直全く理解していない。

でも、自分の目で見届けられないほど遠い未来の世界で、人間とAIが争い合うのではなく助け合いながら生きていけたら、それはとても素敵なことだと思っている。