私は理屈っぽいし、物事には何かしらの意味や理由を求めたくなる性分だ。
だから、私から何かを提案する場合にはそれなりの理由があって、提案が大きければ大きいほど根拠などをまとめて資料を作る場合もある。要は頑固な性格に理屈っぽさがくっついた面倒な性格なのかもしれない。

けれど、すべてのことに慎重だというわけではない。
今思うとどうしてそんなことをしたのかわからない行動は数知れないし、旅先になると開放的になるからか余計に突拍子もないことをすることもある。知らない街中で、細道に入ってひっそりと営んでいる団子屋さんにはいってみたり、一駅くらい歩けるだろうかと途中下車をして二十分歩いてみたりしたこともある。

どちらの自分も、私だとわかっているから戸惑うことはないが、自分の性格を説明するときは少しばかり面倒だと思う。

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そんな私の身体が勝手に動いた瞬間。
もちろん、いくつもあるが一番大きなことは「新しい職を探した」ことかもしれない。
前職を退職して病気の治療を続けていたある日、私は友人と電車で半日近くの場所にある博物館にきていた。特別な刀剣を見るためだった。ただ、私たちは旅行も観光も展示物を見るのも好きだったため、少し長めにその土地に滞在することにした。電車はあえてゆっくり鈍行を挟んで、見慣れない駅名をなんと読むか予想したり、たくさんの人が降りる駅には何があるのだろうかと想像したりと、その土地につくまでもたくさん楽しんだ。

そして、ついに目当ての博物館までやってきた。展示物は想像していたよりもずっと多く、そして親切だった。一つ一つ丁寧に拝見してその土地の歴史について学びながら、一番の目的であった私にとっての「特別な刀剣」も見ることができた。不思議と心は軽く、でも穏やかだった。
それから観光として、その土地を歩いて回り美味しいものを食べ、宿でもめいっぱいお話をして、まるで最高に楽しい修学旅行のような体験をした。

その帰り道だった。
急に、「明日から暇だな」と思ったのだ。今まで病気の治療で精一杯になっていて暇だなんて思ったことはなかった。ましてや、旅行の次の日なんてぐったりしているものだろうから、「休む」という予定がしっかりと組み込まれていた。それでも私は脳内で「暇だな」と思ったのだ。

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そこからの行動は早かった。「暇だし、働いてみるか」この文章が脳内に浮かんでから、すぐにネットで仕事を探した。めぼしい場所をみつけては募集要項を熟読し、履歴書を書いてそのまま応募をした。
旅行から帰って二週間。たった二週間で、私は次の職場が決まっていた。
今でもこの行動力に驚き、そして少し引いている。でも、とてもよい職場とめぐり合って充実した日々を送っている。病気の治療は続いているものの、そのことに理解を示してくれる職場で、たくさんの感謝を伝えながら仕事をしている。

前職を辞めたときは、もう一生仕事なんてできないのだろうと思っていたが、まるで青春の一ページのような儚い体験をした瞬間、急に私は再び大人になった。この行動のおかげで、今の私がいるから、感謝をしつつ、たまにもっと慎重に物事を考えようと戒めている。