一人暮らしを初めて、やっと自分が家事全般を好きではないことがわかった。たぶん、自分のために何かをするのが好きではないのだろう。洋服を洗うのも、食器を綺麗にするのも、部屋を掃除するのも、結果として自分のためになるのが、なんとなく居心地悪くなっているのだろう。自分のために何かを頑張るということが、どれだけ素敵で尊いことかは理解しているけれど、それを私自身がするかどうかは全く別問題だった。
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ただ、唯一好きなことがあった。いわゆる「断捨離」。大きな枠に入れるとしたら掃除という家事に入らないだろうか。入っていてほしいという気持ちも込めて、今回は私がなぜ断捨離が好きなのかをつらつら書いていこうと思う。
私が断捨離を始めたのは、引っ越しをする少し前のことだった。
当時、仕事をやめて気力はないのに時間だけはあった。抑うつ状態だった私の六畳の部屋は、足の踏み場はなく、私は常にベッドで生活をしていた。困っていることなんてたくさんあったが、見ないふりをしていた。ただ、ある日なんとなく目の前にあったゴミをゴミ箱にいれた。いっぱいになっていたゴミ箱の中身をまとめて母親に頼み、ゴミ出しをしてもらった。たぶん、きっかけはこれだけのことだったのだと思う。数年ぶりに机の一部が見えた。それから私は気分転換になるだろうかと思って、辞めた職場の資料をまとめて捨てた。机とキャスターの一番大きな部分があいていく。目に見えて何かが変わることが楽しかった。加えて前職への未練だとか重荷だとかも消えたような気がして楽しくなってきた。
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だ、それだけを考えて整理していく「断捨離」という行為は頭の整理にもなった。
「これから使うかも」「今度着るかも」。そんな言葉は私の中にはなかった。ほとんど、身辺整理のような気持ちでいたのだろう。「今」必要かどうかだけで物を整理していくと数週間で、足の踏み場もなかった汚部屋は、こざっぱりとした部屋に変わった。
その後、私は引っ越しをすることになるのだが、引っ越しをして気付くのが私は「断捨離」は好きだが「整理整頓」がとにかく苦手だということ。台所下のぽっかりとしたスペースに何をどう置けばいいのか全くわからなかった。よく聞くシンデレラフィットというのに憧れたこともあったが、私にはさっぱり才能がなかった。仕方がないから私は物を減らすことにした。
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女性の平均身長程度の私が、両手で抱えられるものは、もしかしたら女性の平均よりもずっと少ないのではないかと気付いた。掃除や整理整頓は苦手意識があるくせに、数か月に一回、必ずどこかで「窮屈だな」と思うことがある。そのときは部屋の中に物が増えすぎてしまったときだ。だから私はしっかり二日間の休みをとって断捨離をする。今の私が持てるものはどれだけなのか、必要なものはなにか、改めて吟味するのだ。
改めて、家事全般は苦手だと思う。けど、唯一わたしが好きなことは「断捨離」。このおかげで、苦手な家事ともいい距離感を保てているのだと思う。